第五話 誓い
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のだ。
多分、退けないのだ。俺を後ろに置いた所為でミュッケンベルガーは部隊を下げる事が出来ずにいる。ミュッケンベルガーの弱点だな、勝ちに徹すればよいのに何処かで他人の目を気にしている。その事が彼の用兵に冷徹さを欠かせている……。
哀れだな、そう思った。前線で混乱している連中の中には後退したがっている者もいるはずだ。“訳も分からずに突っ込めと言われるよりは遥かにましだろう” 全くだ、爺さん、あんたの言う通りだよ。俺達は後方に置かれて幸いだ。どうやら最終局面は俺と爺さんが反乱軍を攻撃して逆転勝利という事になるだろう。
逆だったな、ミュッケンベルガーは俺と爺さんを前線に出し自分達の部隊を後方に温存した方が良かった。そうなれば多分最終局面では俺と爺さんをミュッケンベルガーが救う形になっただろう。周囲の人間も流石は司令長官と感嘆したかもしれない。
「敵が接近してきます。対処しないのですか、司令官」
参謀長のノルデン少将だった。この男がまるで頼りにならない、軍事的にも人間的にもだ。参謀としては無能、おまけにこちらに敵意を持ち隠そうとしない。何でこんな馬鹿が参謀長なのか……。まじまじとノルデンを見ているとキルヒアイスが話しかけてきた。
「閣下、今少し艦列を前方に出して応戦いたしますか?」
「……いや、まだ早い。さらに後退せよ。キルヒアイス少佐、焦る必要は無い。今一歩で敵の攻勢は限界に達する。攻勢をかけるのはその瞬間だ」
「はい、閣下。出過ぎた事を申しました」
済まないな、キルヒアイス。俺がこの馬鹿を怒鳴り付けないように気を遣ってくれる。それにしてもこの馬鹿、反乱軍の動きに気を取られてキルヒアイスの気遣いをまるで分っていない。スクリーンを怯えた様な表情で見ている。味方が欲しいな、俺を助けてくれる参謀、そして実戦指揮官……。爺さんの艦隊を見た、艦隊は無理せずに後退している。爺さんはミュッケンベルガーの指揮の拙さに呆れているだろう。
爺さんは俺に協力してくれるだろうか? 戦場には飽きた様な事を言っていた。だがあれは報われないからではないだろうか、俺なら爺さんを差別したりしない。士官学校を卒業したからといって実戦で役に立つとは限らない。軍事教育など受けなくても用兵上手は居るのだ。爺さんと目の前の参謀長を見ればそれが良く分かる。
「何をしているのか、一体!」
スクリーンに映る惨状に思わず叫び声が出た。馬鹿げている、何時まで反乱軍のあの馬鹿げた艦隊運動に付き合っているのだ! 帝国軍はまるで野獣に追い回される臆病な家畜のような醜態をさらしている。だが反乱軍のあの無秩序な運動もそろそろ終幕の筈だ。
「キルヒアイス、攻撃は短距離砲戦で行おうと思う」
「その方が宜しいかと思います」
「全艦隊に準備を命じてくれ」
俺とキルヒア
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