暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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EVIL 悪鬼羅刹
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無邪気な調べが空気を震わせた。

黒くもなく、白くもなく、無色透明な声。

その声が空気に溶け消える前に、ハッと弾かれたように真っ白な少女が顔を上げた。

その顔に浮かんだのは、まず歓喜。

溢れんばかりの喜びの感情が、堰が切れたように爆発する。

しかし、次いでその感情を塗り潰すように現れたのは、《絶望》だった。

だが、レンはその感情を認識できない。

大粒の涙が視界をぼやけさせ、焦点が全く定かにならなかった。頬を熱い塊が幾つも流れ落ち、あごからポタポタと滴り落ちた。落ちた水滴が地面に丸い水溜りを作る。

ふらふら、と頼りなく両腕が上げられる。

つぅーっ、と半開きになっていた口の端から唾液が零れ落ちる。

唾液と涙が混ざり合って、その一部が漆黒のマフラーを濡らしていたが、そのことをもはや紅衣の少年はは意識していなかった。

意識し、認識していなかった。

ただただ、目の前の少女のみを視認する。

だが、足を踏み出す前に前に突き出された細い腕があった。

日本古来の、袖口が広い白衣を羽織る手。それはレンの進路を塞ぐように、制すように突き出されていた。

突き出そうとしていた一歩を寸前のところで引き戻し、ジロリと言うか半ば射殺すほどの視線を向ける。

「…………なに?」

地の底から響いてくるほどの声に、しかしカグラは冷静で怜悧な刃のような返答を返す。突き出しているもう片方の手は、今にも突撃しそうなユイの手を握って押し留めていた。

「レン、しっかりして下さい。アスナの様子がおかしいです」

その声に、やっとレンの頭は現実へと帰還する。

異常な熱を放出していた脳の冷房が今更のように自らの役割を思い出してフル回転し始めた。

じゅうぅと音がしそうな勢いで脳内が静けさを取り戻していく。

真っ赤に白熱していた視界が色を取り戻していく。

その眼で、色を取り戻したその眼で、《冥王》の成れの果ての少年は改めて状況を見た。

座ったままこちらを絶望的な眼で見るマイ、その向こうでぼんやりという言葉が似合うくらいに立ち尽くしているキリト、そしてそんな彼をさながら聖母のごとき表情で見つめるアスナがふと顔を上げて────

眼が合った。




ゾグン────と。




背筋に冷水を直接ぶっかけられたような悪寒が走った。

意識を集中し、冷静になったからこそ、分かった。

この空間には、今自分達が存在しているこの空間全体に、()()()()()()()()()

たった今、カグラが忠告してくれるまでに全くと言っていいほど気が付かなかった。

空間のディティールそのものに干渉するほど
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