第十二話 〜わたしの帰る場所 -Home-【暁 Ver】
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きもい」
どうやら失敗したようだ。結局ボブは複数ある選択肢の内、最も無難な答えを出した。
『それにしても、彼女はたいしたものだな。あの年齢であれほどの竜を従えるとは』
視線の先には──── 白竜。体躯はそれほど大きくはないが、白銀に輝く翼を羽ばたかせながら、威風堂々と空を泳ぐ姿は正しく──── 竜の名に相応しい者だった。その背中にはそれを成し遂げた小さき召喚士が、最初からここは自分の場所であると主張するかのように座っていた。桜色したショートヘアを風に遊ばせながら竜の背に座る姿は、御伽話の主人公のようにも見えた。
相変わらず竜を見上げている桐生アスナは──── 恐らく彼女と苦楽を共にしてきた、親友の二人であれば気づけたかも知れないが──── 大興奮状態だった。『ボブ』もそれには当然気づいていたが、こういう場合下手に刺激すると、火に放り込んだ栗のように弾けるだけなので沈黙を選択するしかない。
「……キャロは白魔道士じゃなかった。召喚士だった。風評被害、だまされた」
『……アスナは何を言ってるんだ?』
二人の間に沈黙という名の幽霊が通り過ぎている間に、何故このような状況になったのか、少し時間を戻そう────
「キャロ、下がってっ!」
それは、エリオから発せられた緊張を孕んだ声から始まった。突如として現れたガジェットドローン。それは彼女達が、二手に分かれたところを狙い澄ましたかのように、列車の屋根を食い破って現れた。エリオやキャロが見上げるほどの巨躯。体から這い出ている幾本もの触手が、まるで別の生き物のように蠢いている。データベースの照合結果は──── UNKNOWN。つまりデータにはない種類であった。
エリオがストラーダを構えると同時に動き出そうとした時。体を通り抜けていった不快感。体に満ちていた物が霧散していくような理不尽な感触。キャロを見ると、彼女は自分の足下を呆然と見つめていた。エリオをサポートするべく展開した魔方陣が、蜃気楼のように揺らめきながら消えてしまったのだ。間違いない────
「AMF!」
その叫び声はエリオの物かキャロの物か。あるいは両方だったかも知れない。その声を合図として、小さき騎士の初めての戦いが、今始まろうとしていた。自らの愛槍を握りしめながら敵と対峙し、そして──── アスナの言葉を思い出す。
──── エリオは男の子だから、キャロを守って
エリオは嬉しかった。彼女のような出鱈目な人に託されたのだ。他の誰でもない自分が。だから嬉しかった。ならば──── それに答えるだけなのだ。新たに決意をしたエリオの隣には、いつの間にやってきたのか、桐生アスナがいつものように茫洋とした視線のまま、棒立ちになっていた。
「…
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