第十二話 〜わたしの帰る場所 -Home-【暁 Ver】
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クロスミラージュ? あたしに敬意を払ってくれるのは嬉しいけど、もう少しフレンドリーでも」
ティアナはそこまで口にしたところで頭を振った。彼女は考える。違う、そうじゃない。これが普通なのだ、と。何処の世界にマスターを正座させて説教をするデバイスがいるというのだろう。自分も随分と毒されてきたものだと考えながらティアナは笑った。
ティアナはそこで一端思考を切り替えると、少しだけ感じていた疑問をぶつける事にした。
「ねぇ? この事件をどう思う?」
『申し訳ありません。質問が些か抽象的です』
ティアナは苦笑しながら答える。
「うん、そうよね。……レリック一つ奪うのに三十機ものガジェットを投入。航空型のガジェットまで。そもそも、列車のコントロールを奪ったのはなぜ? 人気のないところまで運ぶため? あたしならそんな回りくどい事はしないわ。とっとと奪って逃げる。それだけ重要なレリックだと考える事も出来るけど」
『マスターの仰る通り貴重なレリックだという可能性も十分あります。ですが、それを差し引いても過剰戦力のように思います。何より、最初から秘匿しようという気がないようにも感じられます』
八神はやてから最初に事件の内容を聞いた時、彼女が感じた違和感。手を伸ばしてもするりと逃げられてしまうような──── そんな感覚。もし、そうだとするならば。導き出される答えは、それほど多くはない。
「目的はあたし達?」
何の為に? 単純に考えれば、あたし達の戦力を図る為だ。……それを知りたいという人間はいったい誰だ。
『マスター。今は列車のコントロールを取り戻すのが、先決かと思われます』
昏い海の底を泳ぐ深海魚の如く、思考の海へ潜り続けていたティアナの意識はパートナーの忠告により急速に浮上した。ティアナは一瞬、呆けたような表情を見せると、僅かに頬を緩めた。
「何だ、やれば出来るじゃない」
『何のことでしょうか?』
「今にわかるわ、あなたにも。きっとね」
桐生アスナは、疾走する列車の上で胡座を組みながら、大空を見上げていた。彼女にしては珍しく大きく瞳を見開いている。ついでに言えば、餌を待つ雛鳥のように口も開いているが、不幸にもそれをいつものように注意してくれる少女は傍にはいなかった。
彼女の保護者兼パートナーを自認する『ボブ』は本当に虫が飛び込んできても気がつかないのではないかと、少々不安になる。注意してもいいが、件の少女に下手なことを言うとへそを曲げるばかりで、言うことなど聞きはしない。こんな時、桐生の無駄によく回る口が、心底羨ましいとボブは思った。
『アスナ? 可愛いらしい口が開いているぞ』
「……
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