第十二話 〜わたしの帰る場所 -Home-【暁 Ver】
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「……それじゃ戦えません」
「……そういう時はこうする」
誰もが納得するような理路整然としたことを言ったわけじゃない。歴史に名言を残すような偉人から見れば、鼻で笑うかも知れない。だけど、アスナらしい正直で偽りのない言葉。そのアスナは今……キャロを抱きしめてる。キャロ、覚悟しなさい。散歩に出かけて『気に入ったから』という理由だけで、何でも拾ってきて──── 『宝物』にしちゃうような子だから。そうなったら……なかなか離してくれないわよ。
「……あたたかいな?」
「はい……暖かいです」
遠い昔。こうして誰かに抱きしめて貰った記憶はあるけど、よく憶えていない。とても暖かくて……懐かしい。アスナさんの鼓動。体温。気持ち。アスナさんの全部が伝わって来るみたい。怖かった気持ちが、波のように退いていく。首に掛かるアスナさんの吐息が少し、くすぐったい。
「……お兄ちゃんが、私が小さい頃に泣きそうになるとこうしてくれた」
──── 今はキャロにもいる。こうしてくれる人が。
あの日、あの時、寒い夜。行き場のなかった、わたしに笑いかけながら手を引いてくれた人。わたしに帰る場所をくれた人。わたしに─── 『家』をくれた人。
「……きっと、その人も……こうしたいと思ってる」
「そう、でしょうか」
「……そう、きっと」
もし、そう思ってくれていたら……とても嬉しい。わたしの大切な人たち。わたしの居場所。わたしの帰る場所。わたしの─── 家。わたしはそれを守るために、アスナさんと同じように怖いと思う気持ちを無くさないように──── 戦おう。わたしを抱きしめていたアスナさんが離れる。少し寂しい。アスナさんはくるりとエリオ君へ振り向くと、こう言った。こう、言ってくれた。
「……エリオは男の子だから、キャロを守って」
エリオ君は満面の笑顔で、任せろと言わんばかりに返事をしてくれた。それが、恥ずかしくて──── 少しだけ嬉しい──── わたしはもう、大丈夫。
「良かったね、キャロ」
なのはさんが本当に嬉しそうに、そう言ってくれた。なのはさんは、わたしの髪を梳くように撫でると、バリアジャケットを展開する。
「高町なのは、出ます」
なのはさんは一言だけそう告げると、白い流星のように飛び出していきました。
──── ありがとね、アスナ
なのはさんがアスナさんと擦れ違う時にこう呟いたのを、わたしは確かに聞きました。きっと、なのはさんにも心配をかけていた。少し前のわたしならもう心配掛けないようにと、変に気負っていたはずだ。だけど今は、気に掛けて貰えることが、ほんの少し嬉しい。
「さぁ、新人
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