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空を駆ける姫御子
第十二話 〜わたしの帰る場所 -Home-【暁 Ver】
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力を貸して。さぁ、いこう。





 キャロの呼びかけにフリードは力強く頷き、がぱりと(あぎと)を降ろす。白銀の竜の口に灯るは、些か頼りない小さき炎。だが──── すぐに変化が訪れる。フリードの口を中心として、複雑な幾何学模様が刻まれた円環が一重、二重と展開されていく。キャロから供給される魔力、自らの魔力、そして大気中の魔力素までも貧欲に取り込み、質量と熱量を爆発的に増していった。

 キャロは空高く掲げた右腕をゆっくりと降ろし、ガジェットにとっては、死と同義な言霊(スペル)を告げる。

「──── Blast ray.……Fire.」

 体をも震わせる轟音と共に撃ち出された太陽の如き火球は、大気を焦がしながらガジェットを目指し──── 断末魔の悲鳴を上げさせる暇すら与えず、文字通り消し飛ばしてしまった。敵を失った火球は暴れ足りないとばかりに、そのまま谷底を目指し──── 二度目の轟音と共にその役目を終えた。





 それぞれの役目を終えた彼女たちは、一部始終を見ていた。スバルはどこかの誰かさん同様、年頃の少女としては心配になるほど口が開いている。

「ティア?」

「……あれって、ちび竜よね。もう竜じゃないでしょ、あれ。怪獣よ、怪獣。アスナの好きな……なんて言ったっけ? ウルトラ何とか。いつ来るのよ。何処に電話すればいい?」

「知らないよ」

「で、レリックは?」

 スバルは笑いながら戦利品を誇らしげに掲げて見せた。

「ん。こっちも制御は取り戻したから、もうすぐ止まると思うわ」

 ティアナの言葉通り、列車はすでに減速し始めていた。ティアナは屋根の上でぽつりと立っているアスナへと近づき声をかける。

「どうしたの、ぽけっとして」

「……めがふれあ」

 ティアナは特に何も答えず、いい加減にアスナへのツッコミは八神部隊長へ一任しようと、本人の承諾も無しに勝手な事を考えながらアスナの手を引くと、エリオやキャロ達と合流する。お互いに怪我一つない事を喜んでいると、フェイトが必死の形相で空から降ってきた。

「エリオっ、キャロ! 大丈夫? どこか怪我してない? お腹痛くない?」

 最後のは明らかに違うと思うが、随分と心配していたのは二人に伝わったようだ。エリオとキャロはお互いに顔を見合わせた後、大丈夫ですと力強く頷いて見せた。大切な人を安心させるために。自分たちに居場所をくれた人を笑わせるために。そして──── 彼女に一番言いたかった言葉を紡ぎ出す。

────── ただいま





 ティアナは少しだけ羨望を乗せた瞳で三人を見ていたが、ふと。アスナが何もない虚空を猫のように見つめているのが、視界に入った。その姿はあまりにもいつも通りな彼女だ
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