Mission
Epilogue
Epilogue アンドロメダ
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
か娘みたいな、特別な友達だから」と彼は答えた。とても、寂しそうに。
「この子は待ってるんだ。帰って来るのを。あいつが帰って来るまでにくたばることは絶対ない」
誰を、どういう理由で待っているのか。2年も経てばノヴァも何とはなしに理解していた。
ノヴァはそっとユースティアの手を握った。槍を扱っていたと聞いた手は、2年の入院生活ですっかり少女らしく柔らかいものになっていた。
「待っててもね、帰って来ないんだよ。それでもずーっと待つの?」
眠るユースティアは返事をしない。それが返事に思えた。頑として態度を変えないという返事に。
「……そっか。ユースティアは強いね。羨ましいよ」
ノヴァの周囲は変わらずにいることを許してくれない。
2年も働けば、職場のお節介な中年が忙しなく縁談を持ちこんでくる。そうでなくとも、同僚も結婚に意欲的になり、どこそこのコンパに行かないかと誘ってくる。
「あたし、もう、挫けそうかも」
その時だった。
握っていたユースティアの手がぴく、と震えた。
硬いてのひらは、弱々しく、されど精一杯に、ノヴァの手を握り返した。
「ユー…っ」
ノヴァは椅子を蹴倒して身を乗り出す。だが、すでに彼女の手から小さく懸命な握力は消え失せていた。
「……あは。ユースティアは厳しいよね。挫けたくても、これじゃしばらくはできないじゃん」
ユースティアが死体同然でも生命活動を維持しているのは、本人の意思の力だ。
ユースティアはただあの人を待っている。あの人が枕元に立ち、もう終わりにしていいと告げるのを待っている。
その宣告を得られた時、この少女はようやく頑張るのをやめて、眠ることができるのだ。
ノヴァは握り返してきた手を持ち上げ、両手で強く包み込んだ。
(あたしは、ルドガーとユリウスさんを待ちたい。それが実を結ばなくても。結果じゃないんだ)
世間があの兄弟を忘れても、ノヴァだけは覚えていて、そして帰りを信じ続けよう。この世の条理に逆らってまで己を生かすこの娘と一緒に。
(待ってます。この子と一緒に。ねえ―― ?)
ユースティア・レイシィは今日も生きている。無数の管に繋がれて、運命の人を待っている 。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ