第16話「京都―決戦A」
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木々に囲まれた山の中。決して人が立ち入ることはないであろう山奥。
まるで自然だけが吸い取られたかのように綺麗に抜け落ち、約20m四方が平野と化している奇妙な空間があった。
まるで決闘をするためにあるかのような、そんな場所。
現代にはそぐわないそんな地で向かい合っていた2匹の獣が同時に動いた。
チェーンメイルで全身を覆った男―メルビン―が大地を蹴った。
――黒い服で身を包んでいた男―タケル―が足をスライドさせて、安定した足場を整える。
地が爆ぜ、大地が砂塵と化して舞い上がる。一歩目を踏み込んだ時点で約5mの距離を潰し、踏み込んだ足の力に耐えられなかった大地が砕けた。
――腕にこもった力にスーツが反応し、明らかな筋繊維の膨張を引き起こして腕を肥大化させる。
さらに一歩。爆発的な力でさらに距離を詰め、西洋の剣で刺突を繰り出した。
――腰だめに構えられたソードが圧倒的な速度で閃いた。
「なんと」
星人の声が自然とこぼれた。
「なに?」
タケルの声が自然と漏れた。
一瞬で決着はついていた。
おそらく、お互いに相手の動きを目で捉えることはできなかったのだろう。
しばらく呆然としていた星人だったが、諦めたように微笑んだ。2,3歩下がり、タケルの顔をジッと見つめる。そして――
そのままズルリと上半身が体からずれ落ち、地に落ちた。辺りに広がる赤の血がおびただしく、生々しい。
「見事、猛」
そのまま動かなくなった。
それを無表情で見つめていたタケルの口からは、血が。
「……お前も」
そのままガクリと膝を突き、体に突き刺さっていた敵の剣を抜き捨てた。地面に倒れこみ、血を咳き込みながらも呟く。
「ガンツ……俺の転送を、頼む」
――にしても、ミスった。
唸るように、自分の失敗を反省する。
今回、たまたま勝てたから良かったものの、あまりにも無謀すぎた。
もっと相手との距離をとって、相手の戦闘法、得意レンジ、苦手レンジ、観察を重ねて慎重に。それが生きるための最低限。
余りにも相手が威風堂々としていたため、その勢いに呑まれてつい付き合わされてしまった。
たまたまこちらの刃が早かったからこうして生き延びているわけだが、あと数瞬遅れていたら先に絶命していたのはこちらだった。
「……」
自己の反省をしつつ、転送を待つ。
だが。
5秒、10秒。
一向に転送は始まらない。
「……?」
恐ろしいほどの嫌な予感と共に、コントローラーを見て
「
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