第16話「京都―決戦A」
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山から投げ出された自分の体とバイク。そして底の見えない断崖。
自身が落ちても大したことはないだろうが、バイクが無事かどうかの保証はない。というか、いくらガンツ製のバイクでも、この高さからならさすがに故障するだろう。
移動手段を失うことは、即ち、時間切れによる死を意味する。
「……ふ!」
――諦めるな。
そんな言葉が一瞬の記憶と共に脳をよぎり、反射的に体が動いていた。
この際、バイクは捨てる。バイクを蹴り、空中での推進力を得る。どうにか断崖に手をかけ、飛び移ることに成功。
――……方向はこのまま真っ直ぐ。距離は……。
コントローラーで敵位置の方向と距離を確認。
「……」
目を閉じ、足に力をこめる。
腕を放し、断崖との僅かな距離を保ったまま落下。体勢を絶壁から見て垂直に立て直し、全力でその壁という大地を蹴った。
凄まじい速度で黒い弾丸が放たれた。闇の空に放物線を描き、流星の如く突き進む。
「……?」
不自然な竜巻が起こっていた。だがそれは全く動く気配を見せず、天災としての脅威を感じない。そして何よりもその足元。みたこともない鬼のような生物がイナゴの如く群れを成している。自然発生とは思えないソレらに、タケルは首を傾げていたが、すぐにその危険性に気付いた。
――直撃コース……だと?
このまま行けば竜巻に頭から突っ込むことになる。さすがに天災とガンツスーツの耐久力勝負など、予想もつかない。
とはいえ、この世界において限りなく凡人の彼に空中で方向転換など出来なるはずもない。結局、胸の傷と頭を庇って、竜巻に突っ込んだのだった。
「出てこいごらぁ!」
「てがだせねぇな、こりゃあ」
鬼達が呑気に呟く中、最後尾の一鬼への寄生に成功した其は遂に命を得た。さすがに鬼というだけあって居心地は素晴らしく、力もなかなかのものだ。
――だが、タリネェナ。
まだ大和猛を殺すには及ばない。
「なんだ、ありゃ?」
最も大きな鬼が呟いた。なかなかに強そうな鬼だ。どうやらリーダー格のようで、周りもその鬼に従うように動いている。
――アイツも、もらうか。
にやりと笑みを浮かべ、ばれないようにさりげなく、一歩ずつ。ゆったりとボス鬼に歩み寄る。
そのため、其は気付かなかった。
大きな鬼が指し示した物体。全員の鬼が注目するそれ。黒を纏った人間が竜巻に突入するサマを。
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