第16話「京都―決戦A」
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から獣へ。肉や骨に血や神経、あらゆる体組織が姿を強制的に変化させ、欧米人の姿はいつの間にか狼のようなそれに変化していた。
獣独特の唸り声をあげ、鼻をひくつかせる。
――ここから北北東に約1キロ。
近い。この程度ならすぐに着く。
メルビンほどに強い命はないが、それに準ずる強さの命ならまだまだある。
――……今行くぞ、大和猛。
もう一度姿を変えようと、其の肉体が変形を始めた時だった。
頭部が弾けとんだ。
「グ?」
次いで、後脚、前脚、腹部……。
次々と肉片と化していく自分の姿に、だが其は動じない。
――まさか、大和猛?
全てが原型すらとどめずに弾けた後、ゆっくりと別の命への変化を始める。別に焦る必要はない。どれほどに粉微塵に砕かれようが、どうせ、本体は破壊されはしない。
足がつながり、下半身をなした。腕が体に接合し、上半身になる。上半身と下半身がお互いに求め合い、最後の頭部は首の中から生えた。
「……ぬぬぬぬ」
生まれ変わったように人間の姿に戻った。今度はタケルと同年齢程度。服も高校生の学生服だろう、学ランを羽織っている。
「……どこだ?」
大和猛の位置を探ろうと首をめぐらせる。だが同時に今度はレーザーのようなものが飛んできた。
「……なんだ?」
咄嗟に身を捩ってそれを避けるがどうやら追跡性能があるらしく、見事にレーザーで縛られ、地面にアンカーで固定されてしまった。
「なんだ、これは?」
ピクリとも動かない体から少しずつ力が抜けていく。
――なんだ?
首を傾げようとして、気付いた。
「……転送されているのか!」
――なら!
命を変形させる。今まで高校生でしかなかった体が大いに膨れ上がり、その膨張率に耐え切れなくなったアンカーが地面から抜け落ちた。転送は中断され、転送された一部の肉体も無事に其のもとへと戻った。
グニグニと姿を変え、人間の頭を形成し、翼を背に携え、大きな爪を――
ドン
変化を果たそうとしていた肉体が、肉片に留まらず、粉微塵に留まらず、比喩でもなく、本当に血と化した。
地盤に穴を開け、血だまりを形成したその様子に、
「……ぬぬ、へ?」
唯一、残った頭部から呆けた声が漏れた。目だけをウロウロさせる星人の眼前に、失血のせいだろう、顔を蒼くさせたタケルが姿を現した。
闇の帳が包み込む。山中の虫達が謡い合い、互いの存在を光らせる。月明かりがほとんど届かぬ木々の中、まるで闇の申し子がこの地に生誕したかのような、そんな恐怖が其を襲う。
情けなく顔を歪ませる星人に、タケルはZガンを無言で掲げる。
「ちょ、
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