第16話「京都―決戦A」
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傷の処置ではない。
敵の正体、弱点の把握。これらが生き残るために必要なことだった。
とりあえず、包帯がわりの制服を体の穴の部分に巻き、気休めの処置を完了させる。
ちなみに巻いた制服は詰襟のほうではなく、インナー―いわゆる白いカッターシャツ―を、体に巻きつける。その方が布が柔らかいので、体に優しく巻き付けやすい。しかも血がどれだけ漏れているのか、白いシャツが赤く染まった具合によって簡単に確認できる。
ステルスのまま先程の戦闘場所に戻り、少しでも情報がないか、辺りを見回す。
――完全再生型ではない、か。
チェーンメイルや特攻服、さらにはおびただしいほどの血が流れていることからも巻き戻しのように再生するわけではない、と一応の類推を立てておく。
というか、そもそもタケルが見てきたどの再生型の敵とも違っていた。
道具を寄り代に再生する敵、核が残っていれば再生できる敵、意識があれば再生できる敵、複数の命をもち、それが尽きるまで再生できる敵……etc。
そもそも今回のあれは再生というよりも変身に近い。タイプとしては複数の命を持つ敵に近いのかもしれない。
――いや、待て。
座り込んだまま顎に手を置き、考える。
今まで見てきた全ての敵の記憶を手繰る。
どこかに既視感があった。以前どこかで苦戦を強いられたような、そんな少し曖昧な記憶。
「……確認、するか」
呟いて、コントローラーにて敵位置を確認。 死という時間制限を負った体で、少しでも時間が縮まらないように、慎重に歩き出した。
「ガンツ……武器の転送を……」
その表情は、明るくもなく、暗くもなく。淡々と無色に。
正に、彼の『用事』だった。
既に日が暮れていた。
どっぷりと夜の顔を見せ始めた誰もいない山の中、其は苛立ちを押さえられずにいた。
最も自信のあった伝説の西洋騎士の命をつかえば、大和猛も簡単に取り込むことが出来たはずだったからだ。だが、それは失敗した。それも、完敗という形で。
猛に負わせた傷は、深いが致命傷には全然足りない。精々動きの精彩を欠くようになる程度だ。
――バカが、意味のない決闘方式をとりやがって。
真正面から戦ったのは完全にメルビンの暴走だった。彼の命が強すぎて上手く扱いきれなかったのだ。もっと隙を突くなり、慎重に戦うなりしていれば恐らく大和猛などメルビンの敵ではなかっただろう。
苛立ちが募るままに其は姿を変える。
最も捨て駒になる凡人の人間形態をとっていたが、いつまでたっても大和猛は襲ってこない。こうなったら、こっちから襲うしかない。下手に回復されても困る。
「……ウウ〜〜」
人
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