暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
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と考え肩の抜いて耳をそばたてる。
だが、そんな安心したような空気が充満する広場の中で、一人だけぴりぴりとした空気を纏った者がいた。
レンだった。
レンは、この時点で何か嫌な感じを感じ取っていた。それは本能とも言うべき物だろう。
そして、続いた現象は人々の期待を裏切り、レンの予感を的中させるものだった。
空を埋め尽くす深紅のパターンの中央部分が、まるで巨大な血液の雫のようにどろりと垂れ下がった。高い粘度を感じさせる動きでゆっくりとしたたり、だが落下することなく、赤い一滴は突如空中でその形を変えた。
出現したのは、身長二十メートルはあろうかという、深紅のフード付きローブを纏った巨大な人の姿だった。
いや、正確には違う。レンを含めたプレイヤー達は地面から見上げているので、深く引き下げられたフードの奥が見通せるのだが ── そこに顔がないのだ。全くの空洞、フードの裏地や緑の縫い取りまでもがはっきりと確認できる。だらりと下がる長い裾の中も、同じく薄暗い闇が広がるのみだ。
ローブの形そのものには見覚えがあった。確かあれはアーガスの社員が務めるGMが纏っていた衣装だと説明書に載っていた。
しかしあれは、男性ならば魔術師のような白髭の老人、女性なら眼鏡をかけた女の子のアバターがフードの中に収まっているはずだ。何らかのトラブルでローブだけ出現させたにしても、深紅のフードの下の空疎な空間は人々に言いようのない不安感を抱かせた。
「あれGM(ゲームマスター)?」「なんで顔ないの?」
たちまちそんなささやきが周囲から沸き起こる。
と、それらの声を抑えるかのように、不意に巨大なローブの右袖が動いた。
ひらりと広げられた袖口から、純白の手袋が覗いた。しかし、袖と手袋もまた明確に切り離され、肉体はまるで見えない。
続いて左袖もゆるゆると掲げられた。一万のプレイヤーの頭上で、中身のない白手袋を左右に広げ、顔のない何者かが見えない口を開いた気がした。── 気がした。直後、低く落ち着いた、よく通る男の声が、遥かな高みから降り注いだ。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
世界はその一言から始まった。
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