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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
12人目の天然道士
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は無かった。返事も、何度呼びかけても帰ってこなかった。
自分の愛猫が、この世という認識の世界から永遠に別れを告げたことを理解した。もう二度と―――もう二度と―――

「・・・苗。お前はもう死にたくないか?」
「煩い!どっかいってよ!」

ヒステリックに闇の書へそう叫び、私は四宝剣を振り上げた。四宝剣は確率湾曲宝貝。主が望めば全能の力を振るい、あの犬を生き返らせたようにぽんずの生存確率を・・・・・・弄って?


『もう未来に『2代目リインフォース』は存在しません。仮に似た存在が生まれたとしても、それは決して私ではないのです・・・』


それは、ほんとうにぽんずか?私の愛猫で苦楽を共にしたぽんずなのか?
ぽんずは何故死んだ?私を庇ったからだ。ぽんずは賢いから、あそこに割って入れば自分がどうなるか分かっていただろう。そんな決死の覚悟を決めて飛び込んで、命を絶たれたぽんずを生き返らせる。なら私のために体を張って死んだぽんずは何所に行くんだろうか?

死者を起こしてはいけない。そう言ったのは私だ。死者は確かな意思を持って生き抜いた果ての存在だから、生きている人間に都合よくされていいはずがない。私には、ぽんずから「死」まで奪う権利は無いではないか。

もしも生き返らせて、五体満足の大山猫が返事を返したとして、その返事を返した猫は本当に自分の知っている自分を庇った猫なのか?それは、代わりを用意したようなものでは?私のためにその身を捧げたぽんずでは―――ない、としか感じない。

あの時、ぽんずは死んだ。

私には、この剣を振るう資格がない。全てを思いのままにするだけの傍若無人さ。これだけが、今決定的に欠けていた。


「・・・私は、もう行かせてもらう。勇敢なるお前の家族が無事天の国へたどり着けることを」
「待って」

闇の書の足が止まる。苗はその表情を失った血濡れの顔で、闇の書に一言だけ言った。

「これ以上、誰も殺さないと約束して」
「・・・約束は守る」

闇の書はそれ以上何も言わなかった。そのまま彼女は空に飛び去り、後には真っ二つになったぽんずの亡骸と、顔の血を洗い流す水を両目からとめどなくあふれさせる苗だけが残った。

「ぽんず・・・私、これでよかったのかな?」

分からない。分からないけど、もう苗にはそれ以上物事を考えることが出来なかった。
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