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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
12人目の天然道士
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握る。草の蔓が絡み合った様な歪な剣を振り上げ―――その瞬間その場に座り込んだ。まるで地面に足を引きずり降ろされるような感覚に、自分の腰が抜けていることを自覚した。

怖い。後ろに誰かが居て、「お前は人を殺した上に証拠隠滅までするつもりか?」と問いかけてきたような気がした。いるはずもない誰かが横で「それでまた存在を消したらどうする気だ」と非難の目で見ている。さざめく波が「お前は同じことを繰り返す愚か者だ」と嘲笑う。空の雲が「お前の罪を見ているぞ」と無表情に見下ろす。
世界のすべてが私を外へ外へ追いやっているような気分だった。

「私って、こんなに愚図で馬鹿だったのかな」

自分の都合で、ちょっとなら許されるなんて調子づいて、取り返しのつかない事をした。

そう言えば、昔も同じようなことがあったかもしれない。家で飼ってたフナの水槽を洗うときに、面倒だからとフナを映していた桶を置きっぱなしで休んで、気が付いたらフナは直射日光の熱と酸素不足で死んでいた。子供ゆえの思慮の浅さが招いた事態だった。
それの延長線上だ。フナが死んだ言い訳が思いつかずにその日一日家出した、あの時の子供と同じだ。どうすればいいか分からないから逃げだそうとした。

「死んじゃえばいいのに、こんな馬鹿」

自己嫌悪の感情というのは果てしない。一度負のループに囚われれば抜け出せないまま延々と思考が落ち続け、やがて考えるのも嫌になる。そうして思うのだ。自分なんか死ねばいいと。
ガキっぽい。でもいい。だって体はガキだし。どうせ一回死んでるし。世界は自分が死んだって、滞りなく廻るんだ。父さんだって母さんだってみんなだって、最初は悲しむかもしれないけどそのうち忘れる。忘れられて、惨めに消えて、そうしてずっとこんな思いをしながら死ねばいい。




「では、死ねばいいのではないか?」

ふとそんな声が聞こえた。頭上を見上げると、そこにはリインに似た誰かが空を浮いていた。
違うのは堕天使のように黒い羽と頬に奔った刺青の様な赤い線。身体のあちこちに巻きついた真赤なベルトはまるで自分自身を戒めるように巻かれていた。

「・・・誰?」
「闇の書、と呼ばれる者だ」
「何か用?」
「私は虚構。主がしたはずの絶望が生み出した存在。お前が分岐させた未来で無かったことにされた」

ビクリ、と肩が震える。お前もか?お前も私を責めに来たのか。そんな私の考えをよそに、闇の書は勝手にしゃべっていた。

「我が体は主のために。我が御心も主のために。私は、主の絶望の証だ」
「・・・それで?私を殺しに来たの?」
「お前が望むなら」
「望まなければ?」
「敵の所へ」
「敵って、誰?」

闇の書は私を殺しに来たわけではなかったようだ。死ねばいい、と言ったのも私がそう望
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