第110話
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されたのは、うっすらとした嫌悪と苛立ちだ。
「承服できないな。
主の恵みを拒絶するその性質もさる事ながら、それを武器として振り回すというのが何よりも。
一度でも御言葉を耳にしたのなら、即座に腕を引き千切ってでも恵みを得ようと努力するのが筋だというのに。
所詮は異教の猿に、人の言葉は通じないか。
せっかくそちらの言葉に合わせたのに、返ってきた台詞がその程度の品性とはな。
ならばこのビアージオ=ブゾーニが主の敵に引導を渡そう。
猿が人のふりをするのは、見るに耐えないんでね。」
「テメェがビアージオ、か。
なら、アニェーゼの居場所も知ってんだな。」
「知っているのと教えるのとは全く別物だがね。」
ビアージオと名乗った男の両腕が左右へ交差する。
キン、と小さな金属音が聞こえた。
それぞれの掌には、首にあった十字架が一つずつ握られていた。
それらは上条の腹の前へ軽く放り投げられる。
「十字架は悪性の拒絶を示す。」
ゴッ!!、と二つの十字架が膨張した。
膨張速度は砲弾に等しい。
一瞬で長さ三メートル、太さ四〇センチにまで巨大化した十字架が襲い掛かる。
まるで金属で構成された、鉄骨の爆風だ。
「おおォ!!」
上条は右手で壁と化した十字架を殴り飛ばす。
しかし潰せたのは片方だけだ。
その間に、もう片方の十字架の先端が、岩石のように彼の身を叩いて真後ろへ吹き飛ばした。
一気に床へ叩きつけられ、そのまま二、三メートルは滑った。
とっさに床へ手をつこうとしたら、その右手の動きに氷の床が反応した。
床は立方体にえぐられ、上条は下階の通路へ落下する。
全てが氷で作られた船体に、クッションとなる物はない。
上条は痛む全身に対して歯を食いしばり、今度は慎重に左手で床をついて起き上がる。
頭上の大穴から、ビアージオの声が飛んでくる。
「聖マルガリタは悪竜に飲み込まれた時も、十字架を巨大化させる事でその腹をうちが」
ビアージオは十字架の魔術について説明をしていた。
だが、最後までその説明を聞く事はできなかった。
なぜなら、旗艦が大きく揺れ、さらにビオージアがいた通路に何か大きな影が通り過ぎた。
上条は大穴から見ていたが、速すぎたので何が通過したのか分からなかった。
ただ分かったのは、そのナニかにビオージアは巻き込まれたという事だ。
再び、旗艦は大きく揺れる。
(何がどうなっているんだ!?
恭介が何かしたのか!?)
困惑しながらも、上条は頭上にいたビオージアを気にしつつも通路を走る。
大穴から上条を見下ろしていたビオージアだったが、突然大きな揺れを感じた直後、後ろから何かに巻き込まれた。
そのナニかが身体に巻きつくと、旗艦の外に追
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