第二十二話 狂戦士
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気だ。
文字通りの問答無用、純粋な殺意の波動を発しているあれが何なのか、唯一セイバーだけが理解出来た。
「……キリト、下がってください」
セイバーはキリトにそう言うと、前に歩み出た。
その表情は、僅かに焦りの色が見えている。
アサシンと対峙していた時も、同じような表情をしていたが、今回はその比ではない。
明確な負の感情を叩き込まれているのだ。
キリトは、セイバーに言われたとおりに後ろに下がり、シリカの側へと近寄る。
シリカは殺気に当てられたのか、歯の根が噛みあわないほど震えて立っているのもやっとの状況だ。
「…キ…キリト…さん、何ですか―――あれって、何なんですか……」
キリトのコートを掴みながら、シリカはキリトに問いかける。
思わずキリトは顔を顰め、後悔していた。
自分は聖杯戦争の関係者だ。
故に、何時どんな時でも戦いになる事は覚悟していた。
だが、今回は自分の軽率な行動により彼女を……シリカを巻き込んだ。
アサシンの事件で分かっていたはずなのに……。
無関係な少女をこの戦いに巻き込んだ事をキリトは悔いていた。
「……シリカ、今すぐクリスタルで此処から脱出するんだ」
それがせめてもの罪滅ぼしだった。
すぐにでも使えるようにと、用意させておいた転移結晶。
それが役に立った。
「な……で…でもキリトさんは……?」
「俺はいい…今は君だけ脱出するんだ」
「そ…そんな!?キリトさんも一緒に……!!」
シリカが、逃げようと言いきる前にキリトは叫んでいた。
「…いいから早くしろ!!!」
怒号が辺りに木霊した。
初めて聞くキリトの本気の怒鳴り声。
その声にシリカは肩を震わせる。
ビクリッと震えたのだが、シリカはその怒鳴り声の意味が理解出来た気がした。
それは怒りではなく、純粋な願い。
キリトの表情はそう訴えかけていた。
その顔を見ると、シリカは唾を飲み込み、転移結晶を取り出す。
だが、キリト達を置いていく事に対する罪悪感からなのか、なかなか転移の言葉を発する事が出来ない。
そんなシリカの気持ちを組み取れたのか、キリトはシリカに対して優しげな笑みを浮かべる。
「…大丈夫……俺も後で合流するから――――今は脱出してくれ」
絞り出すように声を出す。
苦し紛れの笑顔。
相手は今まで以上の強敵。
正直な事を言えば、此処から無事に帰れる保証はない。
だが、そう言うしかなかった。
シリカだけでも此処から脱出させる。
キリトはそう決心していた。
「でも…」
シリカはそれでも決心出来ない。
そんなシリカにキリトは諭すように言う。
「…無事に合流出来たら、またあの店のチーズケーキを一緒に食べよう―――
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