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センゴク恋姫記
第3幕 夏侯元譲
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……」

 二人は、突然のことにわけがわからないと泣きそうな目で曹操を見る。
 だが、曹操は笑顔で言った。

「そうね。まあ、折檻も確かにあるんだけど……理由があるのよ。いいから縛りなさい、秋蘭。しっかり、堅くね」
「…………わかりました」
「秋蘭!?」

 意を決した夏侯淵に対し、縛られようとする夏侯惇は、もはやガチ泣きである。
 自分はなにかとんでもないことをしたのだ、という疑心暗鬼で顔面も蒼白である。

「姉者……華琳様の言いつけだ。許せよ……」
「ぐすん……優しくしてね、しゅうらん」
「うっ………………」

 ヨヨヨと崩れ落ちる姉の姿に、シスコンの夏侯淵は思わず抱きしめたくなる衝動に駆られる。
 しかし――

「ダメよ、秋蘭。絶対に解けないぐらいに縛りなさい。理由は後で教えてあげるから」
「…………姉者。諦めろ」
「うぅ…………」

 固い荒縄をこれでもか、と体に巻き付けていく。
 何重にも巻きつけ、夏侯惇をほとんどミノムシ状態にした夏侯淵が、やり遂げた表情で汗を拭いた。

「ふう。何故でしょう、すごくやりがいがありました」
「しくしくしく…………」
「……まあ、いいでしょう。春蘭はともかく、秋蘭なら落ち着いて話が聞けるでしょうしね。誰かある!」
「はっ! なにかごよ……………………」

 外で警備をしていた兵が王座の間に入ると、そこに寝転ばされた芋虫状態の夏侯惇を見て、絶句する。

「外で待っている彼の者を連れて来なさい…………あんまり見ていると、あとでどうなっても知らないわよ?」
「は、はっ! す、すぐに!」

 慌てて飛び出していく警備兵。
 それから程なくして、一人の男が王座の間に入ってくる。

「!?」
「なぁ!? き、きさまぁ!」

 その男――ゴンベエの姿に、夏侯淵は身構え、夏侯惇はミノムシの状態で跳ねまわった。

「…………どうなっとるんじゃ、これは?」

 ゴンベエは呆れたように頭を掻く。
 牢から出されたゴンベエは、自身の羽織を受け取り、着込んでいた。

「ふふ……まあ、こうでもしないと春蘭は、また貴方を殺そうとするでしょ? 貴方も変な気は起こさないことね」
「……まあ、ワシは別に恨みもないしの。あの時は殺気がすごかった故、殺らなければ殺られると思ったのでな。すまんの、おでこ」
「お、おでこぉ!? 貴様! 真名を呼ぶだけでなく、おでこ呼ばわりだと!? 殺す! やっぱり殺す!」
「むう……華琳よ、やっぱこのおでこは物騒すぎんか?」
「「 !? 」」

 ゴンベエの発言に、二人が急激に殺気立つ。
 ゴンベエも、その殺気に身構え――

「3人共、やめなさい! 王座の間であるぞ!」
「「 !? し、しかし! 」」

 
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