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世紀末を越えて
プロローグ
エンカウント・ツー
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私は限りなく全てを知っているのであろう。私は全てを知り、世界になりたい。しかし全てを知り世界若しくは神になるということは驚くことも無く、世界のようにただ在るように、なるように自我の消失を意味するという。私は恐怖のジレンマに捕われている。そうでなくとも私は全てを手にすることなど現状では不可能だ。

こいつ、殺してやろうかな。最強を自負するものの力とは如何程のものか。見下すくらいならまだましなのだ。明らかに人の体を為していながら、ただ、そう云う存在であるとして、相手の尊厳と云ったものを完全に無視しているように思われる。

私にはそれが何なのかは分からない。だが唯一私に取って理解できないものがそこにあるという理不尽な事実だけははっきりと認識できるのだ。お前が既知を為す未知か。あえて問おう。お前はこれが何に見える?何故此れを求める?

「それはただの鍵です。僕はそれを拾うよう命じられました。」

誰に?

異形は再度問うた。

「夢に出て来た者です。しかし少なくとも神ではありません。」

暫くの沈黙の後、その異形は口を開く。

お前を信じよう。私もお前がこれを拾うことで私の感じる世界にどのような変化があるか見てみたい。永遠という概念に絶対などあり得ぬのだ、そう、神か、世界でない限り…。どの道、私はそれに触れることは叶わぬのだ。いいだろう。それを拾うが良い。

僕は促されるがまま異形の向こう側の鍵を拾った。そして振り向いた時にはその異形は跡形も無く消えていた。

声のみが辺りに反響する。

そのまま、前へ進むが良い。お前の家まで送ってやろうではないか。

僕は前へと進んだ。すると、しだいに霧は晴れて行き、気づくと僕は、僕の家の前に立っていた。制服の汚れや傷は無くなっており、ただ、ズボンのポケットの中に、確かな鍵の重みがあるだけである。


 在るものは仕様がない、鍵を渡さねば為るまいよ。

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