閑話1 〜追憶の日々【暁 Ver】
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も仲間だろうに。気が付けば不思議なことに、恐る恐ると事態を見守っていた周りの人間から歓声が上がっていた。よほど腹に据えかねていたらしいが、調子が良すぎる。
「現金なものね」
「いいんじゃない? 桐生さんが皆と仲良く出来る切っ掛けになれば。……ちょっとやり過ぎだと思うけど」
そんなものなのだろうか。当の本人は他人事のようにデザートのプリンをつついていた。何故、桐生さんが親しくもないあたしの為にあれほど怒ったのかは、わからない。もしかしたら、その理由すら違っているのかも知れない。だけど、あたしは感謝した。あたしの代わりに怒ってくれた彼女へと。
「入りたまえ」
ノックをすると相変わらず氷のように冷たく抑揚のない声があたしを迎えた。
「用件は理解した。私の教導に不満があるならば「違います」……何?」
「あたしではなく『アスナ・桐生』の担当教官を変えて欲しいんです。具体的に言えば、あたしとナカジマ候補生の班に入れてください」
「……私が担当教官になれと言う事か。理由は?」
「障害となり得る人間を傍に置いた方が、対処がしやすいからです」
我ながら苦しい理由だと思った。さて、どう出るか?
「了解した。今日、明日中にも手続きをしておく」
「へ?」
「どうかしたかね」
あまりにもあっさりと承諾された為に、間抜けな声が出てしまった。
「い、いえ、何でもありません。それともう一つ。昨日の食堂での一件ですが」
「何の話だね」
「……報告を受けていないのでしょうか?」
「知らん。私の耳に入っていない以上、誰も処分する事は出来ない。以上だ」
……嘘だ。あたしは食堂の一件としか言っていない。なのに何故、処分されるであろう人間がいる事を知っている? この人が何を考えているのか、さっぱりわからない。まぁ、いい。目的は果たした。あたしは自分をそう納得させた。
「ありがとうございました」
男はティアナ・ランスターが出て行ったドアを暫く見つめていたが、やがて視線を窓へと移した。
──── ティーダ。どうやら風が変わったぞ?
「ティアナ・ランスター、スバル・ナカジマに、アスナ・桐生か。……面白くなりそうだ」
男は実に数年ぶりに……楽しげに笑った。男はまだ知らない。『ティアナ・ランスター』、『スバル・ナカジマ』、『アスナ・桐生』。この三名が後に、他の訓練生達から畏怖を込めて呼ばれる名だと言うことを。まるで生まれてからずっと一緒だったかのような息の合ったコンビネーションを見せることを。そして他校との模擬戦、交流戦に於いて訓練校始まって以来の撃墜数を叩き出
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