暁 〜小説投稿サイト〜
空を駆ける姫御子
閑話1 〜追憶の日々【暁 Ver】
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ず、始末が悪い。こう言った人物の周りには、似たような人間が集まるのが常で、今日も取り巻きを何人か連れてる。それにしても……あたしはこんな人間に媚びを売ろうとしていたのか。我ながら本当に自己嫌悪に陥るしかない。

「どいてくれないかな?」

 溜息が出そうだ。理由もなく、どけと来た。

「何故でしょうか?」

 あたしの問いかけに、何故そんな事を聞かれるのか心底わからないという表情を浮かべる。

「何故も何も席が一杯で座る場所ないんだ。僕は君たちの先輩だし、優秀な人間が優遇されるのは当たり前じゃないか」

 頭痛がしてきた。

「彼女の周りの席が幾つか空いてますが」

「君たちがどけば、僕たちが全員座れるんだ」

 あたしの隣にいるスバルは、ぽかんと口を開けていて、桐生さんは男達が視界にすら入っていないようだ。冗談のような話だが、彼はこれを本気で言っているのだ。

「空くまで待てば良いだけの話しでは?」

 何かを言おうとした取り巻きを彼が手で制した。口元は面白い物を見つけたように笑っている。何を言う気かしらね。

「君は、ティアナ・ランスターだね?」

「……そうですが?」

「一部では()()だよ、ランスターの名は。君の兄さんの名前と共にね」

 ……こいつ、知っている。

「武装隊にいた結構なエリートだったらしいが」

──── 止めろ

「命令を無視して、一人で突っ走った上に、次元犯罪者を取り逃がし」

──── 黙れ

「その所為で、一般人にまで被害が出たそうじゃないか」

 激高して立ち上がりかけたあたしの視界に飛び込んだのは──── 音もなく彼の前に立った桐生さんだった。

「何だね、君は。どいてくれるのかい?」

 場違いな発言をする彼は、彼女から立ち上る異様な気配に何も感じていないようだった。周りがざわめきだした時、彼女の右足がすっと床から離れたかと思うと、次の瞬間には彼の股間を蹴り上げていた。

 彼は形容しがたい悲鳴を上げて股間を押さえながら床へと踞る。顔にはびっしりと脂汗をかき顔色も真っ青だ。スバルを見ると額に手をやりながら天井を見上げていた。生憎あたしは女だからか、その痛みは理解出来ないが樣子から察するに相当なものなのだろう。

 それをやった桐生さんは男の髪を両手で掴み無理矢理立たせ、そのまま勢いよく男の顔面へ膝を叩き込む。耳障りな音があたしの耳へと届いた。鼻が折れたのか、曲がってはいけない方向へと曲がり、勢いよく鼻血を吹き出す。桐生さんはごみを捨てるように彼を投げ捨てると、残った取り巻きへちらりと視線を送る。すわ、大乱闘になるかと思ったが、取り巻き達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 呆れかえるしかない。仮に
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