閑話1 〜追憶の日々【暁 Ver】
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の身内だ。両親はすでに他界していることからも娘かも知れない。利用できる。あたしはそう判断した。
「ホントに調べ損だったわよ? 兄一人。座学、実技共に優秀だが協調性がなく、性格に難あり。教官の心証も最悪だから無事に卒業できるか怪しいわね。とんでもない戦闘力と、あんたが言ってたレアスキルの詳細。アレは本当に魔導師の天敵であり、化け物」
あたしがそこまで言ったところで、肩を万力のような力で掴まれた。
「何子供みたいに拗ねてんの? それとも、僻み?」
「……なんですって?」
「かっこわるいよ、そういうの」
「あんたに何がわかるってのよ。あたしのことなんか知らない癖に」
「知ってるわけないじゃん。話してくれないだから」
「あんたなんかに話してどうなるってのよ! あたしよりも『体力』も『資質』も『魔法』も恵まれてる癖に! 流石、『選ばれた』人間は言うことが違うわね? ……あんたなんかに、あたしの気持ちなんかわからないわ」
「……選ばれた、人間? あたしが? はは……そっか」
彼女は力なく笑うとデスクに視線をやる。デスクの上にあるのはサバイバル訓練の時に支給されたナイフ。彼女はナイフを手に取ると何の気負いもなく、簡単に──── 自分の手のひらをナイフで引いた。
止め処もなく溢れる彼女の血。驚きで固まっていたあたしは我に返ると、急いでメディカルキットを取り出し応急手当を試みる。わけがわからない。今の言い争いの流れで、なぜ自分の手のひらを切ったのかさっぱり理解できない。怒鳴り散らしたいのを我慢して手当を続ける。血が止まらない。かなり深く──── え? なに、これ。
「驚いた?」
温かな人間の血が溢れ出す傷口から覗いているのは……冷たい金属。
「『戦闘機人』って言うの。あたしの体、機械なんだ。勿論、全部じゃないよ? 『機械』と『生体』の融合。人間を超えるべく造られた……それがあたし」
言葉が、出ない。
「ランスターさんは恵まれているって言ったよね。当然だよ。そういう風に造られたんだから。あたしはね? お母さんから生まれてこなかったの。あたしが生まれたのは『ポッド』の中」
もう……い、い。聞きたくない。
「こんな形で『選ばれ』たくなんか、なかったけどね。他の人を羨んでも、あたしの体が普通になるわけじゃないから。だったら全てを受け入れて、前に進もうって思ったんだ。ギン姉……あたしの姉もそう。あたし達の『力』で誰かを助けようって」
わけがわからない。自分が人ではないことを何でそんな笑顔で話せるんだ。なんて──── 強いんだろう。
「あ、あはは。ちょっと偉そうだったよね。ランスターさんの方が座学も実技も優秀なのに」
あたしはなんて──── 弱いん
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