閑話1 〜追憶の日々【暁 Ver】
[3/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
しまったが、抗議の声も上がらなかったので問題は無いはずだ。
これは完全に余談になるが、ボブから話を聞いたお兄さんが、菓子折を持ってお詫びに来た。それを知ったアスナが全力で逃げ出したのをあたし達が総出で追いかけて……これは次の機会にでも話すとしよう。
「ねぇ、アスナ? ぴょん……吉だっけ? 何か由来でもあるの?」
フェイトさんにそう問われたアスナはゆっくりとフェイトさんに顔を向ける。
「……どっこい生きてるシャツのなか」
フェイトさんは可愛らしい困り顔であたしを見る。あたしが無言で首を振ると、何かを色々と諦めてくれたらしく、紅茶のカップへと口をつけた。
スバルとエリオはあたしがお茶菓子として買ってきたモンブランとロールケーキを幸せそうな顔で食べている。このお店はパンもおいしいのだけれど、ケーキもいけるのでよく利用している。あたしは自分のカップへ紅茶を注ぎながらキャロの疑問に答えた。
「そりゃ、そうよ。お互い知らなかったんだし。スバルとの仲だって……同室だったからなんとかって感じかしら」
「……意外です」
意外、か。確かにそうなんだろう。あの頃のあたしはとにかく頑なだった。
「あの頃のティアは怖かったもんね、アスナは怖いよりも『ヤバい』って感じだったけど」
「……うるせえぞ、洗浄剤みたいな色しやがって。トイレに立ってろ」
「ホント、いい加減にしないとぶっ飛ばすよ?」
「……やってみろや」
「二人とも黙りなさい?」
いつものじゃれ合いではあるけれど、エリオとキャロがいる時は止めて欲しい。特にアスナの口の悪さが二人に移ったら、フェイトさんのお叱りがこっちまで飛んできそうだからだ。
「……本当は三人とも仲良しなんだよ、ね」
フェイトさんの呟きが少々自信なさげなのは仕方ない。お互いの頬を引っ張り合っている姿を見れば尚更だ。スバルはあまり変わってはいないが、当時のアスナを見たら絶句してしまうに違いない。だけど、それは。あたしも同じかも知れないけれど。エリオとキャロの好奇心に満ちた視線に促されるように、あたしは続きを話し始めた。
「……何でこんな状況になったの?」
訓練場の真ん中には、桐生さんが案山子のようにぽつりと立っていた。だが──── 周りを囲んでいるのは長閑な田園風景でも、鳥でもなく。少々殺気立った訓練生達だった。十数人の訓練生が彼女を取り囲んでいる。ナカジマ候補生は、少し緊張した面持ちで答えた。
「以前からそうだったらしいんだけど……教官の言うことを聞かないらしいんだ。それに腹を立てた他の子達が……」
なるほど。以前から溜まっていた物がここにきて爆発したわけだ。この娘は今にも助けに飛
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ