第37話 「格好良い皇太子様(見た目だけ)」
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ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウムだ。忠実なる我が帝国軍兵士達、約束通り迎えに来た」
これが皇太子の第一声だ。
その途端、駐留軍兵士達だけでなく、捕虜達の間からも歓声が沸き起こった。
我々同盟は、皇太子に三百万人もの陶酔者たちを差し出したのかもしれん。捕虜達は皇太子に忠誠を誓うだろう。
この瞬間に、それが解った。
理解してしまった。
皇太子がゆっくりとタラップを降りてくる。
その背後には、宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥と門閥貴族の雄、リッテンハイム候爵が付き従い、さらにその後ろには、改革派と呼ばれる官僚達が列を作っていた。
帝国軍の兵士達が、頭を垂れている。
威風堂々という表現がぴたりと当てはまる。
覇気が強いという訳ではないように思える。高圧的な態度ではない。威圧的でもない。
だが、自然と敬意を払われる。
「帝国の皇太子というのは、これほどのものでしたか?」
ヤンの声が震えていた。
その隣でアッテンボローがぼそりと呟いた。
「親父に言われた事を思い出しましたよ」
「親父さん、なにを言ったんだ?」
思わず聞き返した俺に向かって、アッテンボローが一言、
「位負けするなよ、と言われました」
と言った。
位負け。格などということは言いたくない。
しかし明らかに、軍人レベルでは勝てそうも無い相手だった。
「本物の専制君主だ……。覇道ではなく、王道を歩む王です」
覇王じゃない本物の王者。
そんなものがこの世に存在するのか?
誰もが望む、理想の王。この人に任せておけば、大丈夫。そう思う気持ち。
ダメだ。
それではダメなんだ。
アーレ・ハイネセンは自立、自主、自律を掲げた。
自分の頭で考えて行動する。それこそが民主主義の原点だ。
理想の王の下、安寧と暮らす。それはある意味、幸せな事だろう。彼は、皇太子は民主主義を真っ向から否定してしまっている存在だ。
我々は、同盟は、彼とは相容れない。
どちらが良いとか悪いという話じゃないんだ。
「甘い、甘美な誘惑ですね」
「楽になれよと囁かれたような気がします」
ヤンとアッテンボローも、身を震わせていた。
二人にも分かったのだろう。
皇太子の持つ本当の恐怖が……恐ろしさが。
「まさしく悪魔の誘惑だな」
■イゼルローン要塞 ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム■
は〜るば〜るきたぜ〜イゼルローン。
儀礼服にマント。案外肩が凝るんだ。かといって周りの目があるからな、肩を揉むわけにもいかん。厄介なもんだ。
さて、ヤンとか同盟の原作組はどこかなっと。
お、いたいた。うん? なんだありゃ?
深刻そうな表情を浮かべてやがる
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