暁 〜小説投稿サイト〜
皇太子殿下はご機嫌ななめ
第37話 「格好良い皇太子様(見た目だけ)」
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウムだ。忠実なる我が帝国軍兵士達、約束通り迎えに来た」

 これが皇太子の第一声だ。
 その途端、駐留軍兵士達だけでなく、捕虜達の間からも歓声が沸き起こった。
 我々同盟は、皇太子に三百万人もの陶酔者たちを差し出したのかもしれん。捕虜達は皇太子に忠誠を誓うだろう。
 この瞬間に、それが解った。
 理解してしまった。
 皇太子がゆっくりとタラップを降りてくる。
 その背後には、宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥と門閥貴族の雄、リッテンハイム候爵が付き従い、さらにその後ろには、改革派と呼ばれる官僚達が列を作っていた。
 帝国軍の兵士達が、頭を垂れている。
 威風堂々という表現がぴたりと当てはまる。
 覇気が強いという訳ではないように思える。高圧的な態度ではない。威圧的でもない。
 だが、自然と敬意を払われる。

「帝国の皇太子というのは、これほどのものでしたか?」

 ヤンの声が震えていた。
 その隣でアッテンボローがぼそりと呟いた。

「親父に言われた事を思い出しましたよ」
「親父さん、なにを言ったんだ?」

 思わず聞き返した俺に向かって、アッテンボローが一言、

「位負けするなよ、と言われました」

 と言った。
 位負け。格などということは言いたくない。
 しかし明らかに、軍人レベルでは勝てそうも無い相手だった。

「本物の専制君主だ……。覇道ではなく、王道を歩む王です」

 覇王じゃない本物の王者。
 そんなものがこの世に存在するのか?
 誰もが望む、理想の王。この人に任せておけば、大丈夫。そう思う気持ち。
 ダメだ。
 それではダメなんだ。
 アーレ・ハイネセンは自立、自主、自律を掲げた。
 自分の頭で考えて行動する。それこそが民主主義の原点だ。
 理想の王の下、安寧と暮らす。それはある意味、幸せな事だろう。彼は、皇太子は民主主義を真っ向から否定してしまっている存在だ。
 我々は、同盟は、彼とは相容れない。
 どちらが良いとか悪いという話じゃないんだ。

「甘い、甘美な誘惑ですね」
「楽になれよと囁かれたような気がします」

 ヤンとアッテンボローも、身を震わせていた。
 二人にも分かったのだろう。
 皇太子の持つ本当の恐怖が……恐ろしさが。

「まさしく悪魔の誘惑だな」

 ■イゼルローン要塞 ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム■

 は〜るば〜るきたぜ〜イゼルローン。
 儀礼服にマント。案外肩が凝るんだ。かといって周りの目があるからな、肩を揉むわけにもいかん。厄介なもんだ。
 さて、ヤンとか同盟の原作組はどこかなっと。
 お、いたいた。うん? なんだありゃ?
 深刻そうな表情を浮かべてやがる
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ