第37話 「格好良い皇太子様(見た目だけ)」
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いか?
現在の帝国で、皇帝の地位に就く者は、改革を断行しなければならない。
これは第一条件だ。
軍事力でも、政治力でもなく。改革を断行する者。
それを為しえる者。
これなくして誰も帝位など認めないはずだ。
俺自身も例外では無い。
華々しい戦果など、鼻にも掛けられる事などありえない。
「皇太子の敷いたレールに乗るしか、他に手が無いのだろうか?」
「民衆の願いを無視しては、統治などうまくいきませんよ。それとも劣悪遺伝子排除法を復活させますか?」
「バカな。そんな事はありえないっ!!」
「では、皇太子殿下の路線を維持するしかありませんね」
「やはりそうなるのか……」
キルヒアイスの言った事は、皮肉ではなく。客観的に見ても、そうするしかないと思われた。
■総旗艦ヴィルヘルミナ エルネスト・メックリンガー■
総旗艦ヴィルヘルミナの中を、帝国軍音楽隊によって奏でられる“ワルキューレは汝の勇気を愛す”が響き渡っている。
音楽隊は宰相閣下のご命令で猛練習をしている。
松明式典が行われるのだ。
16世紀の傭兵時代から続く儀式の一つ。
ツァプフェン(酒樽の栓)シュトライヒ(一撃)という名称は、かつての夜(休息)の合図に由来する。
その当時、飲食店(酒場)では、酒樽の栓を打った瞬間に酒の提供を止め、兵士達はテントに帰る決まりになっていた。
その帰営の合図に、トランペットやフルート、太鼓などの演奏が加わり、軍隊音楽による儀式になっていった。
捕虜を出迎えるのに、この厳粛な格調高い儀式をもって帝国へ帰還させる。
かつては帰営の合図でもあったらしいこの儀式。
その指揮者に選ばれた事を名誉に思う。
宇宙艦隊司令長官のミュッケンベルガー元帥も、松明を持って参加するという。演出といえば、その通りなのだろうが、宰相閣下のなさりようには驚かされる。
■イゼルローン要塞 アレックス・キャゼルヌ■
とうとう来たというべきか……。
皇太子ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウムがイゼルローンに到着した。
帝国軍宇宙艦隊総旗艦ヴィルヘルミナが入港してきたのだ。
要塞内は騒然としている。
駐留していたMS部隊が、整然と左右に分かれ、回廊を構成した。
姿を見せた皇太子に、誰もが息を飲んで見守っている。
「とうとう着ましたね」
「ああ」
ヤンの囁き声に頷いたものの、皇太子から視線を逸らせない。
金色の髪が照明を反射して、王冠を思わせるような色彩を放つ。
背は高く。体格はすらりとしている。
遠くからでは、表情まで窺えないが、それでも存在感の強さが伝わってくる。
あれが、銀河帝国皇太子なのだ。
そう思うと、自分の喉が鳴る。
「
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