暁 〜小説投稿サイト〜
皇太子殿下はご機嫌ななめ
第37話 「格好良い皇太子様(見た目だけ)」
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いか?
 現在の帝国で、皇帝の地位に就く者は、改革を断行しなければならない。
 これは第一条件だ。
 軍事力でも、政治力でもなく。改革を断行する者。
 それを為しえる者。
 これなくして誰も帝位など認めないはずだ。
 俺自身も例外では無い。
 華々しい戦果など、鼻にも掛けられる事などありえない。

「皇太子の敷いたレールに乗るしか、他に手が無いのだろうか?」
「民衆の願いを無視しては、統治などうまくいきませんよ。それとも劣悪遺伝子排除法を復活させますか?」
「バカな。そんな事はありえないっ!!」
「では、皇太子殿下の路線を維持するしかありませんね」
「やはりそうなるのか……」

 キルヒアイスの言った事は、皮肉ではなく。客観的に見ても、そうするしかないと思われた。

 ■総旗艦ヴィルヘルミナ エルネスト・メックリンガー■

 総旗艦ヴィルヘルミナの中を、帝国軍音楽隊によって奏でられる“ワルキューレは汝の勇気を愛す”が響き渡っている。
 音楽隊は宰相閣下のご命令で猛練習をしている。
 松明式典が行われるのだ。

 16世紀の傭兵時代から続く儀式の一つ。
 ツァプフェン(酒樽の栓)シュトライヒ(一撃)という名称は、かつての夜(休息)の合図に由来する。
 その当時、飲食店(酒場)では、酒樽の栓を打った瞬間に酒の提供を止め、兵士達はテントに帰る決まりになっていた。
 その帰営の合図に、トランペットやフルート、太鼓などの演奏が加わり、軍隊音楽による儀式になっていった。

 捕虜を出迎えるのに、この厳粛な格調高い儀式をもって帝国へ帰還させる。
 かつては帰営の合図でもあったらしいこの儀式。
 その指揮者に選ばれた事を名誉に思う。
 宇宙艦隊司令長官のミュッケンベルガー元帥も、松明を持って参加するという。演出といえば、その通りなのだろうが、宰相閣下のなさりようには驚かされる。

 ■イゼルローン要塞 アレックス・キャゼルヌ■

 とうとう来たというべきか……。
 皇太子ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウムがイゼルローンに到着した。
 帝国軍宇宙艦隊総旗艦ヴィルヘルミナが入港してきたのだ。
 要塞内は騒然としている。
 駐留していたMS部隊が、整然と左右に分かれ、回廊を構成した。
 姿を見せた皇太子に、誰もが息を飲んで見守っている。

「とうとう着ましたね」
「ああ」

 ヤンの囁き声に頷いたものの、皇太子から視線を逸らせない。
 金色の髪が照明を反射して、王冠を思わせるような色彩を放つ。
 背は高く。体格はすらりとしている。
 遠くからでは、表情まで窺えないが、それでも存在感の強さが伝わってくる。
 あれが、銀河帝国皇太子なのだ。
 そう思うと、自分の喉が鳴る。


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ