第37話 「格好良い皇太子様(見た目だけ)」
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て回っている。
視線の先には、護衛役として先行していた艦隊の兵士達が、規律正しく周囲を警戒していた。
「あれは確か……」
「ミッターマイヤー少将の艦隊ですね」
「隣にいるのは、ロイエンタール少将か。兵士達の士気の高さには目を見張るものがあるな」
皇太子を狙う者は誰であろうと許さん、とでも言いたげな態度を隠していない。
これほど兵士達に心酔される皇太子とは、いったい何者なのだろうか。
「うちの親父は、帝国にとって希望じゃないかと言っていましたね」
「希望か……」
「確かにね」
アッテンボローの親父さんは、そう考えているのか。
希望。
帝国のというより、臣民たちにとっての希望。
門閥貴族にやりたい放題にされて、苦しんできた平民達にとっては、門閥貴族を押さえ、改革を実行している皇太子は希望なのだろう。
なにせ次期皇帝だ。
帝国のトップ。
ルードヴィヒの治世は、今よりも開明的で、自由で、暮らしやすくなるだろう。
「親父は皇太子が豹変しない限り、帝国は安定すると思っているみたいです」
そうだろう。それが多くの人々の予想だ。だからこそ主戦派の主張よりも、和平を訴える声が大きくなりつつある。
あの皇太子となら、和平交渉ができるはずだ。
あの皇太子となら、戦争をやめる事ができるかもしれない。
そんな声が勢いを増しつつある。今回の捕虜交換は一つのチャンスだ。
皇太子と直接、話し合える機会が訪れた。
それをたかだか一議員のために、ふいにするわけにはいかない。あの議員、ハイネセンに戻ったら更迭が待っているな。
「そうか、さて俺たちも、黒ビールでも飲みにいくか」
「おっ、いいですね」
「飲みにいきましょう」
■宰相府 ラインハルト・フォン・ミューゼル■
皇太子がイゼルローンに向かった。
事務局の連中も一緒に連れて行ったために、宰相府はがらんっとした感じになってしまった。
皇太子の代わりに、ブラウンシュヴァイク公爵が決裁を行っている。それでもむずかしい案件は、皇太子に見て貰わなければならない。
頭の痛いことだと思う。
統治者、改革者として皇太子は有能だ。それは認める。
だが皇太子が有能であるからこその、問題が現れだしている。
個々の問題であれば、皇太子よりも有能な人材はいるだろう。だが改革全体を見通せる者がいないのだ。
それ故に皇太子の代役がいない。
皇太子ただ一人に、問題が圧し掛かっている。
もし仮に皇太子が亡くなるような事があれば、改革が頓挫すると思われるほどに。箱入り娘ならぬ、箱入り皇太子にしておきたいと、帝国の上層部が思うのも当然だろう。
俺が仮に、あくまで仮にだが、簒奪したとしても、同じように思われるのではな
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