第1部:学祭前
第4話『波紋』
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ることができず、「誠君のこと……」
「誠のこと? だったら、誠も連れてきた方が……」
「誠君のこと、誘惑しないでくださいっ!」
今までのうっ憤を絞り出すように、言葉は言った。
「西園寺さんの紹介で誠君を知って、なのに……なのになんで、今更割り込むようなことをするんですか?」
「違う。私も……ううん、桂さんが誠のこと気にする前から、誠のことが好きだったんだもの」
「だったら、なぜ私に誠君を紹介するような真似をしたんですか!?」
「だって……あのときは、誠が桂さんのことを好きだったから、そう思ったから……」
「どうせ自分に振り向いてくれないだろうから、誠君の好きにさせたかったからですか!?
それとも、あの時は本気だったとでも言うんですか!? そんなの理由になりません!」
気がつくと言葉は、手持ちのカバンを地面に落とし、世界の方を揺さぶりながら声を荒げていた。
下校する桜ヶ丘の生徒たちが、じろじろと2人を見つめる。
「お、落ち着いてよ桂さん、とりあえず、裏で話そう」
言葉の手を払いのけながら、世界は言った。
細い裏道。
ここなら、人目につかない。
霧が濃くなり、木々をぼやけさせ始めている。
「どうして、私と付き合っているのを知ってて、誘惑したんですか?」
「誘惑って……」
「誠君と屋上で……してたじゃないですか!」
「!!」
触れ合う練習……そんな、自分でもわけのわからない理由で、誠とお互いにスキンシップをかけた結果がそれだった。
「それは……」
「誠君は私のことだけを思ってくれていたのに、どうして…………」
「それは……誠と交わった証がほしかったし……」
「でも結局、そのせいで誠君は西園寺さんのところへいっちゃったじゃないですか!! あんまりです!!」
「……そのことは、申し訳ないとは思っているけど……」
「もう近づかないで下さいよ! 仲介ももういいです!!」
「…………。……近づく」
きっぱりと言った。世界まで。
「私、誠のこと好きだし。誠だって、私のこと好きだって言ってくれたんだもの!!」
「……西園寺、さんに……?」
「私、うれしかった。 誠君が私のことを好きなら、私だって」
「貴方が誠君を誘惑するから、誠君もおかしくなったんだと違いますか?」
「そんなことはない。誠は、私を選んでくれた。うん、そうだよ。誠は私のことが好きだし、私だって誠のことが好き。本当は片時も離れたくないんだ!」
言いきって、去っていこうとする世界の腕を、言葉はつかむ。
「違います、誠君は、私のことが好きなんです。」
「でも……迷わないって、もう決めたんだから。もう誰も近づけさせない……貴方も……」
世界は、言葉の手を払いのけ、去ろうとする。
邪険にされたと思い、言葉は、もう我を
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