第1部:学祭前
第4話『波紋』
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「貴方の気持ちも、分かるから……」澪はそう言いかけてから、あわてて、「いやいや、私は彼氏なんて恥ずかしくて作れないから、彼氏をとられた貴方の気持が分かるなんて言えないけど……。
ただ……わかりたいし……貴方を助けたいって、思ってる。」
本音が知らぬ間に出ていることが、自分でも信じられなかった。
「……どうしてですか……? 学校も違う見ず知らずの私を……」
妙な顔で、言葉が訪ねた。
「それは……」
澪は思いが、喉まで出かかった。
初めて会ったときからの思い。
きざもキザ、恥ずかしいと思いつつも、気がつくと澪は、大声で言葉に言ってしまっていた。
「貴方の、笑顔が見たいからっ!
貴方が苦しんでるのが、耐えられないからっ!!」
「え……」
しばしの沈黙が流れる。
澪はパッと顔を赤らめ、
「ごめん……つい大声出しちゃって。 でもね、初めて会ったときから、貴方になんか親近感のようなものを感じていたんだ。 どこか不器用で、人付き合いが苦手なところも似ているし」
「いえ……。でも、ありがとうございます」
戸惑いながらも、言葉は頭を下げた。
「あのさ……」
「はい?」
「初めて会った時、学生証落としていったよね……。ほら、マックでぶつかった、あの日」
「あれ、貴方が拾ってくれたんですか。 よかったあ……次の日血眼になって捜したんですよ。
ありがとうございます」
「気をつけてね」優しく微笑み、澪は続けた。「あの、確か名前……桂って、言ったよね。」
「そうです。桂……言葉です。貴方は?」
「澪だよ。秋山澪。……これから、もし、あの伊藤って奴のことで悩み事や心配事があったら、いつでも相談してよ。 メール、交換しないか?」
「そ、それは……」
言葉は戸惑う。その飛びぬけたプロポーションゆえ、女子から冷たくされていた言葉である。この人の言うことも、どこまで信じられるか。
澪は言葉の、多少ためらいの混じった表情を読み取り、
「……わかった、教えたくないなら、いいよ。ただ、私のメールアドレスだけ、送らせてくれない?」
自分のメールを送れば、万が一の時に連絡もつくだろう。
言葉はきょとんとしつつ、
「そ……それならいいですけど」
思わずうなずき、赤外線通信で澪のアドレスを受け取った。
幸い、このことはなかったことにしよう、という結論になったとか。
澪は嬉しかったが、言葉は少し複雑な気分であった。自責の思いもある気がした。
「桂!」
玄関で言葉と別れるとき、澪は声をかけた。
「なんでしょう?」
「学祭当日、私たちの……いや、私の演奏、出来たら聴きに来てほしいんだけど」
「え……?」
言葉は、目をしぱたたく。
澪はすぐに頬を赤らめ、しかし笑顔で、
「そ
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