暁 〜小説投稿サイト〜
Cross Ballade
第1部:学祭前
第4話『波紋』
[7/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
そう思い込んだ言葉は、学生服の裏の胸ポケットを探りはじめた。

 その時、
「待ってくれ!」
 割って入ったのは、澪だった。
「唯も、貴方も、トーンダウントーンダウン」
 むりくりに、笑顔を浮かべた。
「……これができると思いますか」
 低い声で、言葉が答える。
 澪は、言葉の目をじっと見つめ……。
「……できないとは、わかっているけど。それでもな。
そっちでもいろいろとあるみたいだな。付き合っていた恋人を取られて、気が立ってるんだよね」
「……本当に、取られています。その上、この人も誠君をとろうとしていているんですから」
「……そりゃあ、怒るのも無理はないわな。 でも一番悪いのは、取った奴じゃないのか。唯は事情を知らなかったんだし」
「さっき、誠君に彼女がいるって、この人言ってましたよね……」
「う……」澪は言葉が途切れた。「とにかく、貴方が伊藤ってやつの本当の彼女なんだろ? それより取り戻す方法を考えた方がいいんじゃないのか? 唯は伊藤と、まだそれほど親しくないんだし。お互いに敬語で話しているんだぜ」
「男女の関係、どうなるかわかったもんじゃありません。それにこれ以上、誘惑する相手が増えると困るだけです」
「いや、それはわかるけど……」澪は戸惑ってから、「まず第一に、彼氏をとった相手の説得はできないのか? 私が唯によく話しておくからさ、そっちを優先させるべきだと思うけど・・・。」
「そう……ですね……」
 ようやく言葉が、納得した。そのように澪には思えた。

「何やってるの?」
 教師の顔、教師の声で、さわ子が声をかけてきた。
 気まずい雰囲気が、音楽室の外からも感じられたらしい。


 さわ子は一応、このことを榊野の教職員に報告すべきと思ったようだが、澪は必死に説得を続ける。
「ま、待ってくださいよ……。別に暴力沙汰とか、そういうのを起こしているわけじゃないんですし、なかったことにできない?」
「そうは言われても……一応教師としては、向こうにも何らかの連絡をとったほうが」
「大丈夫です。本当はおとなしい子だと思うし」
「澪、こいつの知り合いか?」律が目をしぱたたいて尋ねた。「何で、んなこと、言えるんだ?」
「知り合い……というほど会ってはいないけど、態度からしてそうだろう。」
 成程、言葉は澪の横で、はにかんだ顔でかしこまっている。
「いや、でも大人しい人ほどキレると怖いからねえ。そんなんでいいのかなあ……」


 とりあえず……ということで、他の先生に相談を持ちかけるために、さわ子は教員室の中に入った。
 唯達は、練習のために音楽室に残る。
 澪と言葉は、教員室の前のベンチで、肩を並べて、座った。

「私のこと、かばってくれるんですか……?」
 言葉がまばたきして尋ねた
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ