第1部:学祭前
第4話『波紋』
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すか、それ!? それにしてもアレを夢にまで見るなんて、かなりの重症だなあ……」
梓は呆れた。
「いいじゃない、夢なんだし」
「よくないです。誰と付き合うにしても、節制は守ったほうがいい。それに、羽目を外すとどんどん憂がやつれていくと思いますよ」
「だから付き合ってるんじゃないってば……あの人が好きなことは好きなんだけど……」
「じゃあ、やっぱ彼氏と認めてもいいじゃねえか」律がぼやき口調で言う。「あーあ、悔しいなあ。私も唯みたく、青春を満喫したいよ」
「……もういいよ……。先に練習するから、私」
唯はもう付き合っていられなくなり、ギターの糸の調整を始めた。
「お前ら言いすぎだぞ、見守ってやろうって。噂もそのうち消えるだろうさ」
澪が他の皆をなだめ、唯に続いてベースを調節する。
日がとっぷりと暮れても、軽音部の練習は続いた。
一旦資料をとりに職員室に戻ってきたさわ子に、男子教員が声をかけてきた。
「山中先生。 榊野学園の女の子が先ほどやってきたのですが、お知り合いですか?」
「え?」
「音楽室の場所を聞いてきましたよ。 軽音部の人に会いたいと」
「いえ、知りませんよ。……どうしたんだろう……?」
窓をふと見ると、霧が少しかかっていた。
この軽音部が夜まで練習を続けることは少ないが、学祭近くになると、ごくまれに寝袋まで借りて、泊りがけで練習することもある。
唯の発案で、今日は泊まり込みで練習しようということになった。
澪は集中力を増すためと言って、珈琲を飲みすぎてしまい、トイレに行っている。
「それにしても、あれから急に唯先輩の練習がはかどってますね。いつもはノロノロダラダラしてるのに」
梓が冷やかす。
「いつもがんばってるつもりなんだよ、こっちは」
唯はいつも通り、むくれてみせる。
「榊野に彼氏が待っているもんな」
律はまた、唯の触れられたくない話題を持ち出した。多少妬んでいるものと思える。
「だーから、いいかげんやめてよ」
その時、急にがらりと戸が開いた。音楽室の。
「あ、澪ちゃ……じゃない……?」
その子は澪ではなかった。
戸をあけたのは、唯と同じくらいの背丈の(澪は唯より背が高い)、黒髪を腰まで垂らした女の子。
黒いブレザーに、胸元に赤スカーフという、榊野の学生服を着ていて、胸が妙に大きい。
「だれ、貴方……」
言いかけて唯は、思わず息をのんだ。
その少女にある、暗い炎のたぎった瞳に、圧倒されたのだ。
「いやあ、すまんすまん……あれ、貴方、あの時の……?」
トイレから戻ってきた澪は、その子を見てすぐに気付いた。
その子が、あの時に出会った、桂言葉であることを。
……しばらく、沈黙が場を覆った。
「平
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