第1部:学祭前
第4話『波紋』
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うして……?」
「みんな注目してたみたいだよ。こっそり後をつける人も多かったらしいし」
「いや、付き合ってるんじゃ、ないんだけど……」
「ううん、お姉ちゃんの方が積極的だって、みんな言ってる。その人の腕に抱きついたりして」
「…………」
事実。何も言いだせなかった。
「それより、ベラ・ノッテの無料券がまだ来ていないっていうの、あれ、嘘だったんだ……」
「いや、そういうわけじゃ……」
「もうわかっちゃったよ……お姉ちゃんとその人がベラ・ノッテでラブラブの話をしていたって、澪さんからもう聞いちゃったし……」
「ラブラブってねえ……。 でも、どうしても誘いたい人だったから……」
「しょうがないよ。お姉ちゃんにしてみれば、私以上に大切な人なんだもんね」
肩を落として去っていく憂は、最後に付け加えた。
「お姉ちゃんは、どんなになっても、私のお姉ちゃんだからね……」
放課後、音楽室。
学祭が近づいても、練習前のティータイムは、この軽音部の場合、欠かさない。
「唯先輩、先輩が付き合っている男の人って、以前憂も見た、あの人?」
紅茶を口につけながら、梓が目ざとく尋ねた。
「いや、だから違うって……」梓からの問いに、懸命に唯はごまかす。誠に彼女がいるとわかっていながら、隠れて付き合っているのだ。ばれたらなんと言われるか。「とりあえず、早く練習しようよ、あずにゃん」
「そうはちょっといかないです。あれから憂、なんか元気ないみたいですし」
すでにギターをとっている唯に対し、梓は疑いの視線をあからさまに向けていた。
「まあまあ、梓」澪が話に入ってきた。「別にいいんじゃないの。バンドの仲間として、恋が実るよう見守ろうよ」
「澪ちゃん……」
唯は目を潤ませた。
「ちくしょお……唯はうらやましいなあ」
苦虫をつぶした表情で、律がつぶやいた。
「ひょっとしたら、桜ヶ丘で彼氏を作ったのって唯ちゃんが初めてかもね」
さわ子がニヤニヤしながら言う。
「いや、だからそういうのじゃないんだって!」
唯は顔を赤らめる。
「あいつは確か、伊藤って奴だけど、」澪が続ける。「私も、唯とその伊藤がくっついてるところを見たのさ。喫茶店で話している時、なかなかいい雰囲気だったよ。
それに、唯もいつも以上の朗らかな笑顔をみせていたし」
「……でも……」お茶とお菓子を持ってきたムギが不安げな表情で、言った。「噂では、キスしたとか、夜を一緒に過ごしてるとか、そこまで言われているみたいよ。そういうことはないと思うけど……」
「あ、あ、あるわけないじゃない!」唯は熟したリンゴのように紅潮しつつも、「でも、マコちゃ……伊藤君と話すようになってから、二、三度そうなる夢を見たんだよね……」
「って、女の子に言えることで
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