第1部:学祭前
第4話『波紋』
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、自分に強い好意を寄せてくれてうれしいと思ったことを、誠は思い返した。
そして、自分自身も、好意を持っていることに。
「大体、人を好きになるってことは、その人の悪い点も含めて好きになるってことだろ? こいつのなかなか拒めないところも含めて、好きにならなきゃ、西園寺。誠の本当の彼女になるのならね」
泰介は、急に真顔で言った。
「……まあいいけどさ、それほどまでに言うなら、あの平沢って子が誠にちょっかい出さないよう、見張っててほしいんだけどね」
ぼやくような口調で、世界は言った。
「……まあ、できるかぎりはね。ところでさ、甘露寺。あいつが俺に興味を持ってるのって、ほんとか?」
「ああ、とはいえ、あいつは奥手だからね、強引すぎるぐらいに攻めてもかまわないと思うぜ」
何の話だか、世界も誠もふと気にした。『あいつ』とは誰のことなのやら。
ちらりと見ると、光が冷たい視線で泰介を見ている。
「じゃあ、どのタイミングがいいかなあ。放課後ティータイムの演奏も聞きたいしなあ……」
ぶつぶつ言いながら泰介は去っていく。その時の一瞬、誠にウインクをした。
昼休み。
教室では、食堂に行かない生徒たちが、手作りのものやコンビニで買った弁当を食べている。
誠と一緒に食事をとるにはあまりに気まずく、世界は一人で食事していた。
「世界……一緒に食べていい?」
弁当箱を前に、頬杖をつきながら考える世界に、七海が声をかけてきた。傍らに刹那もいる。
二人は世界をはさむような形で座り、それぞれの弁当箱を開く。
「あの平沢って子、いまだに気にしてる?」
七海がさりげなく尋ねた。
「当り前じゃない」
「まあ、桂に比べれば地味な子だからね。平沢って人」
刹那は落ち着いて話す。
「なんだい、刹那も見たのか」
「少しね」
「だったら、止めてくれればよかったのに、」世界はぶっきらぼうに言った。「ひょっとしたら平沢さんに誘惑されて、本当にキスとか、えっちとかしてたんじゃ……!」
「それはないでしょ。噂がたってからあんまり経過してないのに」
刹那はどこまでもクールである。
「あんたもさあ、伊藤なんかやめちゃって、他の奴にすればいいのに」七海は呆れたように言う。「大体あんたにコクる奴なんて、山ほどいただろ。なのに伊藤以外、全員ふっちまってさあ」
「誠よりいい男なんて……」
顔のよさや優しさ、心洗われる笑顔、気前の良さにひかれた。
自分には到底振り向かない人間だと思っていたのに、言葉と誠の仲を仲介してから、いつの間にやら本気になっていて……。
そんな中で、誠と結ばれるチャンスが出来て、逃すことができなくて……。
誠に言葉を紹介してからの自分の思いを、彼女は改めて反芻した。
その時、世
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