暁 〜小説投稿サイト〜
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「チッ、これも空っぽっすよ〜。こんだけ探してないんだったら、もう第1地区には残ってないんじゃないすか?」
灰色をした猫目がくるりと後ろを振り向く。
手にはプラスチック製の真ん丸いカプセルが握られている。よくデパートなんかに置いてあるガシャポンのカプセルだ。
相当ストレスが溜まっているのか、悔しそうな顔をして地団駄を踏んでいる。

「ボス、こっちも無い...。もう無理。もう死にたい」
今度は後ろの方から声がかかる。
虚ろな目は吸い込まれそうなほど真っ黒で、生きているのかと疑うほど生気がない。
こちらもカプセルの中身は空だったようだ。
どうしようかと考えていると、ベルトポーチから取り出した注射器を腕にあてがう様子が目に入り、あわてて注射器を奪う。

「おいっ!死にたいって言ってホントに死のうとする奴が居るか!何度言ったら分かるんだよ...」
「わかった...じゃあ今日は死なない。我慢する...」
虚ろな目の少年は、『死にたい』が口癖で隙あらば本当に死のうとすることがデフォルトである。
最近、人身売買の店から『戦闘が出来るやつをくれ』と頼んで高値で買ったのだ。
その証拠に、彼の右頬には黒いバーコードが貼られている。
この跡が消えない限り『外の世界に出ても奴隷的扱いをされる』と言って、族に雇ってもらおうと戦闘力をみがく奴等は多い。
こいつの場合は死にたいがために色んな薬をつくって、やっと毒薬ができたのに、ちょうどのタイミングで俺に買われただけなのだが...。

「マイボス〜、どうすんすかぁ?もう違う地区に行ったほうが良さそうっすけど〜」
「あぁ、そうだな。カプセルが無いなら、もうここに用は無い」
そう言うと、猫目は嬉々として地図を取り出す。
「実は俺、行きたい街があったんすよ〜!なんでも宝石がいっぱい取れることで有名らしくって!」
こいつはキラキラした物に目が無いからな、と思いつつ彼がじゃらじゃら付けたピアスやヘアピンを見やる。
「へぇ、それで何地区なんだよ」
「第6地区っす!」

にっこ〜とした綺麗な笑顔で返されたが、瞬時に頭をはたく。
そんなに強くした覚えは無いのだが、足元に蹲られた。
「第6地区がどこにあるか分かってんのか?ここから約450キロだぞ?もっと近いトコにしろ」
「え〜!じゃあ逆にボスは、どこがいいんすかぁ?」
「第2地区だ」
「すぐそこじゃないっすかあ〜!つまんねぇ」

そう言いながら、もう第2地区のパンフレットをめくっている彼はかなり順応性が高い。
虚ろくん(猫目命名)を見てみると、心なしか喜んでいるように見える。
よっぽど第1地区での生活が嫌だったらしい、普段より死にたがっていたし。
第1地区は昔は都として栄えたのだが、第7地区が都市になってしまってからは観光客がどっと減
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