暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第五話 敗将の思惑 敗残兵達への訪問者
[7/7]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
 
「そして皇室尊崇の念を、って魂胆ですかね。」
 ぼそり、新城大尉が呟いた。
「正味な話、尊崇自体は否定しないが、近衛にはこんな所にいるよりも、玉体の護持に専念して貰いたいところですね――そうなったら鎮台も主力保持の為に多少は援軍を送ってくれる筈だ」
 馬堂はそう云いながら肩を竦める。
 ――遠慮がないな。少佐も咎める様子もない、譜代と育預、か。 それだけでは無いな。
 観察しながらも笹嶋は軽く戯けて見せた。
「おいおい不敬だぜ。その言い草は。」
 三人共、軽く笑い空気が緩むとそれを見計らったかのように大隊長が書状を取り出した。
「まぁ取り敢えずは親王殿下――尊崇すべき御方の弟君に身罷られては困ります。
申し訳ありませんが中佐殿、これを実仁准将閣下に御願いします。」
 そう云って、笹島に手渡しながら馬堂は思い出したかのように尋ねる。
「海の様子はどうですか?」
「うん? そうだな、荒れている。この季節ならそういうものだ。
輸送にも支障がでかねないが波に強い救命艇も動員している。」
 その答えを聞いた少佐は一瞬瞑目し、表情を消した。
「――それでは最後にもう1つだけ宜しいでしょうか」


[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ