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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その4
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しを信用しろ。じきにその時は訪れる」
「ここから無事に逃げられる、と?だが俺はあのやり方は好かん。人の心を弄ぶような鬼畜な真似は」
「ならばわしを斬捨てるがいい。わしとて、この年になるまで人を誑かし、未来を好き勝手に予測してそれを押し付けて生きおおせた者だ。お前が嫌うであろう、鬼畜な人間だぞ」

 爺は祭祀用の毛織の箒を弄びながら飄々と返す。その者、管輅は大通りの広場の中央に焚かれた紫の炎を見詰める。彼の言によれば、あれは太平要術の書に記載されている、天変地異を起こすための道具であるらしい。
 四神の方角に大盃を置いて火を焚き、麒麟の位置にて儀式を執り行う。そうすれば陽炎のようにおぼろげな存在でありながら実態を持った剣を扱う、幻の兵達が生まれてくるという。これを使って兵力差を引っ繰り返さんとするのが、黄巾党首脳部の企む所であった。たかが書物の讒言ごときを盲信する彼らに丁儀はかなりの不満を募らせていたが、自分一人でどうこうする事もできず、それの実行を執り行っていたのだ。
 官軍が来た時、首脳部は儀式を初め、彼らに大打撃を与える腹づもりでいるようだ。だが管輅いわく、その儀式というのは不完全なものらしい。

「太平要術を使いこなせるほどあやつらは賢くない。一流の術士は何にも頼らずに幻を作れるが、やつらは三流以下の素人。祭器が壊れれば、すぐに術は解ける。その時こそ、お前達は計画を起こせるし、彼女たちは自由の身となれるぞ」
「・・・計画は委細承知している。俺の命令に従ってくれる古参兵たちも、一応理解は示してくれた。三姉妹を無事に生かすためなら、彼らは喜んで命を投じてくれるだろう。だがそれは、お前が予測した通りの未来が訪れなければ何の意味も持たない。もしそれが来なかったらーーー」
「信じぬ信じないかは勝手にせよ。わしは確信しておる。必ずこの広宗に官軍は訪れる。外にいる奴等とは桁違いの練度を誇る、本物の将兵がな」

 「時が来れば私は手を貸してやろう」という言葉に思わず舌打ちが漏れる。仲間を暗殺されながらも屈折せず、耐えに耐え抜いて練り上げた計画は、風に運ばれたかのようにいきなり現れたこの胡散臭い爺のやる気次第によって左右されるのだ。これまで全くの蚊帳の外だったくせに、いざ現れたら自分達の根幹をがっしりと握ってくる。この抜け目の無さと、この者に頼らなくてはならない自分達の無力さに、丁儀は腹立たしい思いを抱えた。
 精一杯の反抗というべきか、彼は管輅の予言にけちをつける。子供染みた事だとは分かっているのだが。

「・・・なんでそんな事が分かるんだ。そんな不確定の、有り得るのかどうかも知らん未来なんかを」
「前も言っただろう。わしは大陸一の占い師ぞ?たかが二つや三つの、将星が向かう先など・・・」

 言葉を濁しながらにやりと邪な笑みを浮かべ
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