サヨナラできない黒い人々。 「他人」2
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窓の外を見ると、雨が降り始めたところだった。
今日はもともと降水確率が高かったはず。
傘なんて持ってないが、濡れて帰るのもまた一興だろう。
そんなことを考えながら、薄暗い部屋の、テレビ画面に視線を移す。
面白くもないアイドル曲を、大して上手くもなく「かわいく」(笑)を
意識しながら歌っているモデルの女ども。
それを上手い上手いとはやし立てながらヘラヘラ笑っている男数名。
見ていて心地の良いものではない。
「ごめんね。俺帰るわ。じゃね〜」
そう言って、適当に笑ってカラオケを出る。
雨はさっきより強くなっていて、傘なしだといよいよびしょ濡れだろう。
そこで俺は、肩にかけているショルダーバッグに、折り畳み傘が入っている
ことを思い出した。
よかった、…これで、濡れずに済む。
俺は、傘をさした。
黒い傘。
リンがもう居ないことから逃げるための、傘。
今頃、葬式はどうなっているだろう。
レンと海斗は出ているだろうが、俺はどうしても行きたくなくて、キャンセルした。
もう葬式が終わっているのなら、花を手向けにでも行こうか。
そう思いながら、気付いたら、家の前だった。
結局、俺は信じていない。
リンが死んだこと。
死に顔は見てない、葬式も行かない、墓参りすら、しない。
もう、諦めればいいのに。
全てを塗りつぶす黒は、全てを偽るための色。
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