反董卓の章
第9話 「スラッシュ、キィーック!」
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どう捉えても構わないっていう命令なんだよ。
それはつまり……好きにやれ、という意味でもある。
(とんでもねぇアホだぜ……なんでこんな奴が大勢力を維持できていやがるんだ。どう見ても親の七光りのおかげだろ)
袁家といえば、漢ではそれなりに名が知れ渡る名家なのは確かだ。
だが、現当主のこいつは、先祖が築いてきた財産を散財するぐらいしか、能がねぇ。
なければ、領民から集めればいいとか思っていやがる。
本当にアホとしか言えん。
ま、腐れた漢王朝には似合いの諸侯ではあるけどな。
いずれは俺が、このアホを操って乗っ取ってやるさ。
そのためにも今は……
「本初様、まだ二日目です。あの関を落とすのは、先陣だけでは厳しいでしょう。ゆっくりお待ちになられておれば、よろしいかと。捨て駒なのですから、時間をかけても潰れてくれるでしょう」
「それもそうですわね……では、ゆっくりと待つとしましょうか。唐周さん、わたくしは天幕の中で休みますので、後の指示は任せますわ」
「御意。ゆっくりとお休み下さいませ」
くくく……よしよし。
これで今の俺は、袁紹の名代というわけだ。
いい感じだぜ……このまま信用を重ねて、完全に右腕となってやる。
そして徐々に兵や武官、文官共を取り込んでいけば……
俺が袁家の領地をごっそり頂いてやる。
「伝令! 先陣に動きあり!」
俺が内心でほくそ笑んでいる時に、前方で動きがあった。
先陣から一人の男が、単独で馬を走らせている。
向かうは水関。
はて? 何を仕掛ける気だ?
本当に内応でもさせる気なのだろうか?
その男は馬を奔らせ、無人の荒野を進み、水関のすぐ手前で馬を降りる。
水関側も、たった一人では何も出来まいと様子を見ているようだ。
その男……黒ずくめの男の姿を見た俺は、不意に全身に痛みが走る。
「ぐっ!?」
俺の全身には、古傷がある。
ちょうど二年ほど前、砦から逃げ出した際に負った切り傷。
それら数カ所が、急激に痛む。
「あれは……誰だ?」
俺は、痛みに喘ぎながらも傍にいた伝令兵に尋ねる。
伝令兵は、こちらの様子を訝しみながらも、答えた。
「は! あれはおそらくですが、劉備軍にいた北郷盾二と呼ばれる男かと!」
「ほん、ごう、じゅん、じ……?」
「は! なんでも天の御遣いと呼ばれる男だそうです」
天の御遣い……聞いたことがある。
あれは確か、黄巾にいた時に公孫賛の四客将と呼ばれた男だった。
だが、それよりも俺の頭を、何かが叫んでいた。
北郷盾二……ほんごう、じゅんじ。
そして黒ずくめの姿……
身体が痛い。
古傷が痛む。
こ
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