サヨナラできない黒い人々。 「他人」1
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ああ、雨が降ってきた。
今日の天気予報は曇りのち晴れ、ところにより雷雲。
降水確率85%、雨はほぼ決定。
周りを見ると、あちらこちらで傘をさす人が増えている。
俺もそれにならい、傘をさす。
黒い傘。
雨に濡れないように。
平然と嘘を吐く、汚い自分を見られないように。
樂とレンも、どこかにいるんだろうな。
ああ、でも、樂どうだろうな。
いないかもしれない。
リン、……リン。
「リン。」
その名前は擬音のようで、口に出せば綺麗に響くはず。
でも俺の口に出したその音は、雨に邪魔されて響かない。
嘘、汚い俺が口に出したって、綺麗に響くわけがない。
俺よりずっと前の方、親族が多くを占める墓の間近に、
目立つ黄色い髪が見えた。
雨はいつの間にか本降りになっていて、すべての人が、俺と同じ
黒い傘をさしていた。
でも、かすかに見える黄色い髪は、大きな黒い傘で自分を隠す
ことはなく、何の意思も感じなかった。
「どうでもいいよ、そんなこと。」
小さく呟く。つづいて、
「りん、りん、りん、りん、、、」
綺麗には響かないと分かっている音を俺は、呟きつづけた。
ずっと聞こえていたお経の声が聞こえなくなると、人々は
流れ出した。
その波に逆らわず、呟きながら流されていく。
背後で遠く、叫び声が聞こえた、気がした。
「日常」が歪んだのは誰のせいだった? 誰の犯した罪だった?
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