サヨナラできない黒い人々。 「弟」
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ああ、雨が降っている。
いつからだろう。
気付けば、周りの人たちはみんな傘をさしている。
黒い傘。
濡れているのは僕1人。
僕は独り。
今日は12月27日、僕の誕生日。
僕らの誕生日。
本当なら、僕はこんな所にはいなくて、もっと華やかな所で、
華やかな格好をして、華やかな声援を浴びて、華やかな………
「僕は、何をしてるんだろう。」
華やかさなんか欠片もない、黒い空と黒い服と黒い自分。
僕は、鏡音レンという人間は、生来の片割れを突然亡くして、
独りになって、自分を見失って、そして…
みんな嘘つきだ。
双子の姉の、リンの葬式。
親族が集まって、リンを偲んで涙を流していた。
嘘つきだ、本当は悲しくなんかないくせに。
本当なら、今日は僕たちの誕生日ライブをするはずだった。
僕と、リンと、海斗と樂。
4人でやっている、やっていたバンドのみんなで。
でも今、僕はリンの葬式に出ている。
多分、海斗も樂もどこかにいるだろう。
会う気にはならないけど。
リンは「交通事故に遭って」死んだ。
「雨で視界が悪く、車が水でスリップした」ことが原因で。
「嘘つけッッ!!」
気が付けば僕は叫んでいた。
いつの間にか周りには、誰もいなかった。
僕と彼らとの「日常」が歪んだのは、リンの葬式が終わった、そのあと。
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