第十話 〜アスナが地球へ行くお話 後編【暁 Ver】
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来るのは、熱さに耐えながらシグナム副隊長を見守ることだけだった。その時……涼しげな風が吹いた。
「はやてちゃん。暖められた空気は勝手に上へと昇っていきますけど……私にもお手伝いさせてもらえますか?」
「うん……ありがとうな、シャマル」
力強く優しい風が、あたし達の髪を踊らせながら空へ……空へと昇っていく。バリアジャケットのスカートを必死に押さえているキャロから、慌てて目を逸らすエリオが初々しい。
「おい……あれ」
ヴィータ副隊長が空を指さす。そこにあったのは、小さいながら紛れもなく──── 雲だった。ヴィータ副隊長が結界を張り、シグナム副隊長が湖の水を蒸発させ、シャマル先生が水をたっぷりと含んだ空気を希望と一緒に空へ。こうして見ている間にも、雲は少しずつ自己主張を始めている。このままいけば、雨が降るだろう。だけど、雨じゃだめなんだ。だから──── 彼女が。
八神部隊長の足下にはベルカ式の魔方陣。バリアジャケットを纏った彼女の周りに白く輝く四つの立方体が出現した。そして、唱える。強力な魔法を不用意に発動させてしまわない為の安全装置──── 詠唱を。
──── 仄白き雪の王。銀の翼以て、眼下の大地を白銀に染めよ。来よ、氷結の息吹
詠唱とは裏腹に白銀の弾丸は大空へと吸い込まれていく。八神部隊長が放った魔法は対象へ着弾しなければ意味がない。だったら。着弾させてやればいい。大空の天井へ。ヴィータ副隊長の結界は内側から破壊する場合、なのはさんでも手を焼くほど堅牢なのだから。
「……ばぁちゃん、はやく」
「あ、アスナちゃん、はぁ、年寄りを走らせるもんじゃないよ」
アスナは穂村さえの手を引きながら結界へと急いでいた。結界内の雲から白い物が降り始めたのを確認したアスナは、矢のように何の苦もなく結界の壁を突き破り、さえの家へと急いだのだ。
「あ、アスナちゃ」
アスナは暫し考え込んでいたが、息を切らしているさえを小脇に抱えみ再び疾走を始めた。驚いたさえがアスナへ何事か訴えたが、アスナは構わず速度を上げた。後でたくさん謝ろうと思いながら。
結界内へさえさんを抱えながら飛び込んできたアスナは、じっと空を見つめていた。八神部隊長が魔法を放ってから僅か数分で、それは降り始めた。だから、アスナも彼女を迎えに行ったのだ。鈍色の空から降り注ぐ真白なそれは、マリンスノーのようにゆったりと舞い落ちてきていた。まるで──── 雪のように。
雪は、降らなかった。その代わり、あたし達の無念を晴らすかのように空から降ってきたのが、雪のように白い綿毛──── スノー・バグ。虫の名が付いてはいるが、歴とし
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