第十話 〜アスナが地球へ行くお話 後編【暁 Ver】
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を履いたことがあったが、兄が狼狽えてしまった為に、それ以来履いていない。その事実は彼女を少しでも女性として意識している証拠でもある為、彼女にとっては嬉しい事ではあったが。
意識を内へ内へと沈み込ませる。仮想敵は、三人。敵の一人が両手に構えた『銃』をこちらへ向ける。アスナは重心を低くし、獲物を狙う蛇のように蛇行しながら敵へと肉薄する。独特な足運びとスピード。敵には彼女が突然消えたり現れたりしているように見えるだろう。
──── 今から十年くらい前に交通事故で息子さん夫婦とお孫さんを一度に亡くしとるそうや
アスナが使う『技』には名前が無い。彼女自身その必要性を感じなかったし、意味を見いだせなかった。だが、スバルがそれはいけないと頑なに主張した。結局アスナが折れてしまい、今では幾つかの技に名前が付いている。尤もスバルに任せてしまうと、『スーパーウルトラ○○○』とか『キックして更にキック』などと、平気で付けようとするので、結局自分で考える嵌めになった。
──── お孫さんは当時六歳。雪が降ると大はしゃぎだったそうや。その人にとって雪は大切な思い出なんやな。……せやけど、温暖化の影響なんかな。去年はまともに降っとらん。その前もや。
敵の虚を突き、横合いから姿を現す。敵は驚くも彼女を撃ち抜かんと銃口を向けようとするが、その時にはすでにアスナの『抜き』が敵の頭部を正面から穿っていた。至近距離から予備動作の無い高速の抜き手─── 『啄木鳥』。
──── 甘いと思って貰ってもええ。派遣任務中に私情を挟んどるのも理解しとる。せやけどな、私はもう一度、思い出したいんや。
二人目の敵はアスナと同じ徒手空拳。敵は何の策も無く雄叫びを上げながら猪のように向かってくる。アスナは突進のタイミングに合わせバク転すると同時に、右のつま先を敵の顎めがけて跳ね上げた。鈍い音と共に敵がよろめく。アスナは着地すると透かさず敵の眼前へ飛び込み、左のジャブを額へと撃ち込む。弾かれるように敵の顔が空を仰いだ。間、髪容れずに無防備に晒された敵の顎へと、大砲のような右を放つ。敵は縦に回転しながら大地へと叩き付けれて動かなくなった。アスナが尤も得意とする左右のコンビネーション─── 『川蝉』。
──── 私らの『魔法』は敵を倒す為の剣であり、何かを守る為の盾や。私はそれを誇りに思うとるし、魔法に出会ったことを後悔もしてへん。……確かめたいだけや。あの頃の気持ちが、私にまだ残っとることを。
アスナが最後の──── 『最大の敵』と対峙しようと構えた時、意識が急速に引き上げられた。そちらへ意識と視線を向けると二人の女性が拍手していた。
「……だれだ」
「ちょ、昨日会
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