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空を駆ける姫御子
第十話 〜アスナが地球へ行くお話 後編【暁 Ver】
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彼女の口から、そんな言葉が零れた。意外な質問になのはとフェイトはお互いの顔を見合わせる。くぐもった声には少しだけ寂しさが乗っていた。

「わたしは……ユーノ君との出会いも初めての戦闘も、何もかもが突然だったけど……うん、そうだ。楽しかったよ。ユーノ君とレイジングハートに教えて貰いながら、魔法を憶えるのは楽しかった」

「私も、そう。リニスが教えてくれる魔法一つ一つを出来るようになる度に喜んだよ。楽しかった」

「今はどうや?」

 はやての言葉に二人は一瞬、言葉を詰まらせた。何か言おうとした時、はやてが顔を上げる。

「私もな、二人と同じや。凄く楽しかったわ。あの頃は本ばっかり読んどったからな。今でも読んどるけど。御伽話にしか出てこない魔法なんちゅうもんが現実にあって、しかも自分で使えるんやで。楽しくないわけないわ……楽しかったわ」

 二人は何も言わず、はやての独白を聞いていた。きっと、彼女は。大事なことを言おうとしているのだ。

「管理局の仕事には、誇りを持っとる。それは間違いないわ。……せやけどな? 人間って贅沢なもんで、それが()()()()になると感謝もせえへんし、楽しいて思わなくなる」

 はやての前に置いてあるアイスティーの氷が、からりと音をたてた。

「私はな。もう一度思い出したいんや、あの頃の気持ち。なんて言うかな、こう……どきどきと言うか、わくわくと言うか……まぁ、ええわ」

「最後まで言ってよっ」

「アスナみたいだよ……」

 誤魔化すようにストローからアイスティーを吸い上げている彼女へ文句を言うが、二人には十分伝わったようだった。なのはとフェイトにしても『魔法』という力に出会った頃の、楽しさと高揚感をいつの間にか無くしていたからだ。いや、忘れていたのか。

 三人を見るといつの間にか、違う話題へと変わっている。地球での思い出。悲しかったこと、苦しかったこと、そして……楽しかったこと。はやてがフェイトを揶揄い、なのはが困り顔をでそれを仲裁するといういつもの光景になったようだ。三人の楽しげな姿を月と星が見ている。そんな姿に呆れるように──── 森のフクロウが、ほうと一声鳴いた。





 朝霧の立ちこめる湖の畔に一人の少女が立っていた。女性らしいラインを隠すように迷彩柄のキャミソールが身を包んでいる。すらりとした足には、履き古したネイビーグリーンのカーゴパンツを履き、足下には管理局から支給された無骨な編み上げブーツ。左の二の腕に結ばれた紅いリボンが、ひらひらと蝶のように風に揺れていた。ティアナやスバルには身なりに気を使えとよく言われるが、彼女……アスナにはあまり興味はなかった。

 まだ家にいる頃。一度だけ彼女としては、かなり大胆な短いスカート
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