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世紀末を越えて
プロローグ
ニル、アドミラリィと樋泉あゆ
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こと気にしないだろうし、その程度のことで自分が好かれていることなど気付やしないだろう。分からないが。これは推測に過ぎない。彼女の真意を汲み取ることなど僕を含め、恐らく大半の人は出来やしないだろう。そっと、給水タンクの隙間を覗き込む。果たして、そこには僕の期待した、彼女の姿があった。女子にしては高い身長、それを縮め、ぎゅっと丸くなって眠る少女。その太腿まである艶やか長い黒髪が、コンクリートの床に広がっていた。

 彼女の名前は樋泉あゆ。僕の思いの人だ。長い睫毛は今は上下に交差して、その大きな目を閉ざしている。桜色の唇も柔らかそうな頬も、眠っているため今は動くことは無い。軽く、彼女の名前を呼びかける。反応などあるはずも無い。そのいつも通りに安堵しつつ、僕は彼女の綺麗な髪を踏まないように隣に静かに座った。そっと、髪を一房持ち上げる。さらりと流れて、掴まないとすぐに溢れ落ちてしまうほどさらさらだ。こんな人を僕は今まで見たことが無かった。この人は、僕の考える、神の形に、最も近い存在だったのだ。

その時、僕の携帯に着信があった。僕の友人からで、そろそろ帰ってこないと怪しまれるとの旨だった。

さよなら樋泉さんまた今度。

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