1年目
冬
冬B*Part 3*〜もう一度空へ〜
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たっぽいぜ。お袋がブンブン振り回してたらしくてさ」
この辺りの話はきっとお袋さんから聞いたのだろう。あの親父さんが自分から話すとは到底思えなかった。
でもだからこそ、あの怯えようだったのか。
それはトラウマにもなるな。
さちに振り回される自分と親父さんを重ねて少しだけ親近感を得る。
そして、軽く手を合わせ、ご愁傷さま、と呟いた。
「それにしてもあたしが姉貴かぁ。弟かなぁ、妹かなぁ。どっちにしろバンドはさせたいなぁ」
そう言いながら愛華は雪景色の中、スケートでもするかのようにクルクルと回る。
「そんなにはしゃぐと転ぶぞ?」
俺は苦笑いを浮かべながらも、いつもの愛華の姿を嬉しく思っていた。
そうして話しているうちに目的の駅へと着いた。
雪のためか、電光掲示板には5分遅れの文字が書かれている。こんな時間だと言うのに電車が遅れているせいかホームには多くの人影が見える。
まだもう少し帰れそうにないな……。
そんなことを思いながら掲示板を見上げていた時、隣から愛華が声をかけてきた。
「拓海、ありがとな」
真剣な面持ちで俺を見つめてくる愛華に、俺はふいに顔を背けてしまう。
「べ、別に大したことはしてねぇよ。ほとんどお袋さんのおかげみたいなもんだろ」
そんな言葉に愛華は首を振る。それに合わせて髪についていた雪がひらひらと舞った。
「そんなことねぇよ。拓海がいたから親父たちと向き合えた、親父とお袋と本当の家族になれた気がした、夢をまた追えるようになった。本当に感謝してる。ありがとう」
そう言って愛華は頭を下げた。いつも強気な愛華のそんな姿に少したじろぎながら、おう、とだけ返事を返す。俺の言葉に顔を上げた愛華の笑顔は周りの雪と同じように白く、美しかった。
そしてそんな笑顔がまた真剣な顔へと変わり、俺の顔を真っ直ぐに見つめてくる。先ほどまでの白く透き通るような肌に少しだけ赤い色を落とした気がした。
「それともう一つ。あたしな……」
愛華はそこまで言って急に俯いてしまう。その右手は心臓の位置で強く握りしめられていた。そして、何かを決心したかのようにガバっと顔を上げた。
「あたしな、拓海のことが―――」
―――間もなく列車が参ります。白線の内側までお下がりください。
愛華の発そうとした言葉は駅のアナウンスによって邪魔されてしまった。ホーム内の休憩所にでもいたのだろう。駅のホームは先ほどよりも人が増え、ざわついていた。邪魔されてしまったせいか、愛華は残りの言葉を話すことなく俯き黙り込んでしまった。
「悪い、愛華! 電車出ちまうから俺行くわ! 話は次会った時にでも聞くから!」
そう言って俺は急いで改札を抜ける。
愛華に手を振ろうと振り返ると、先ほ
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