1年目
冬
冬B*Part 3*〜もう一度空へ〜
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っていた。
「二十歳そこらの若造に何がわかる!! 私たちがどれだけ大変な思いで愛華を育てたのか!! どれだけ愛華に期待を込めているのか!! 貴様に親の気持ちの何がわかる!!」
その言葉は重く、そして強く俺に圧し掛かってくる。
だが俺はそれを跳ねのけ、間髪いれずに答え返す。
「わからねぇさ!! 親の気持ちなんか!! そんな気持ちが愛華を押しつぶしちまったんだろうが!! 逆にあんたは子供気持ちがわかるのかよ!!」
俺の言葉に親父さんはハッとした表情を見せると、俺の隣へと目を向ける。そこには涙を浮かべながらも親父さんを真っ直ぐ見つめる愛華の姿があった。その瞳はキラキラと強い光を放っている。
「俺たちだっていつかは親になる! その時あんたが言った言葉の意味に気付くかもしれない…… でも今は愛華と一緒に夢を追いたいんだ!! 夢を叶えたいんだ!!」
親父さんは俺と愛華を交互に見ながら言葉を選んでいるようだった。その表情には戸惑いも感じられる。
「だ、だが……」
親父さんがそこまで言った途端俺の後ろからバンっとテーブルを叩く音がしたかと思うと空気を切り裂くような声が部屋の中に響いた。
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!! あんたも男だろうが!! さっきから女々しいんだよ!!」
その声に体を震わせ俺と愛華は振り返った。そこには先ほどまで優しそうに微笑んでいたはずの人物が鬼のような形相で立っていた。そんなお袋さんの様子を見てそこにいた全員が固まってしまった。
「ぐだぐだ、ぐだぐだと……。 そこにいるやつの方がまだ男らしいってんだ!!」
そう言ってお袋さんは俺を指差した。いきなり指差された俺はその勢いと表情に縮こまってしまう。それほどまでにお袋さんの放つオーラは圧倒的だった。
「あんたも音楽やってたんならわかってんだろうが!! 愛華の才能がどれほどのものか!! そいつの言うとおり、てめぇが逃げてるだけじゃねぇか!! 愛華が自分の元から離れていくのをよぉ!!」
俺の中で、既に“優しいお母さん”と言う印象は消え去っていた。ただただ、そこにいる人物に恐怖を覚えるしかない。正直、“悪霊”を見た時よりも怖い。そして、親父さんはそんなお袋さんの様子に顔を歪め、蛇に睨まれた蛙のようにガタガタと震えているのが見えた。もはやそこには俺がずっと感じていた鋼のような強靭さは残ってはいなかった。
「わ、わかった。お前がそこまで言うなら認めようじゃないか」
その親父さんの声はか細く、風で飛んで行く紙切れのように弱々しかった。
「……ですって、愛華、尼崎君」
そう言いながら元の“優しいお母さん”の顔へと戻る。しかし、もう俺には爪を隠した鷹にしか見えない。そんな俺も親父さんと同じく
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