第一部
第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
ユヅル
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かった。
――ズクン、ズクン。
少年は呪い続ける。愛しき者も疎ましき者も皆呪いにかかりて危難に陥る。
――ズクン、ズクン。
少年は呪い続ける。己の意思も関係なしに、ただただ呪う。彼が呪うことを望まずとも、彼は呪い続ける。
――ズクン、ズクン。
それが少年にかけられた呪い。「呪う」という呪いであった。
――ズクン、ズクン。
呪印が痛んでいる。呪いの蛇につけられた呪いの印は呪いの少年を、呪いの神の呪いの夢に引き込んでいく。
――ズクン、ズクン。
少年は今眠りの淵に於いて、絶望と憎しみの内に果てていった犬神の夢を見ている。
――ズクン、ズクン。
犬神が呪う。蛇の頭よ砕けてしまえと。絶望と憎しみの内に、お前も死んでしまえと。少年は呪う。
――ズクン、ズクン。
噫、羨ましきと。
――ズクン、ズクン。
呪いの少年は呪いの蛇のつけた呪いの印に引き込まれて、呪いの神の呪いの夢にいる。
――ズクン。
少年は目覚めない。
+
「ほらよ、はじめ」
「ああ、すまないな。……どうした、顔色が悪いぞ」
はじめと紅丸にとってきた肉を放り投げる。いつも携帯している木で造ったお碗に肉と水筒の水をいれ、がぶがぶスープを飲んだり肉を食べながら、はじめの言葉には「アタシよりも寧ろユヅルの顔色のが悪いだろ」と返した。
ああ、と振り返ってはじめは、紫に変色した唇に土気色の肌のユヅルを見て頷く。その額には手拭いが乗せられていた。曰く、先ほどから水を飲ませたりと色々な措置をとっているのだが、中々よくならないらしい。
紅丸が肉からふいと顔を背けて丸まった。肉を食べながら、はじめも聞いてくる。
「……これは何の肉だ? あまり食べたこと無い味だな」
「何だと思う?」
「……鹿? 兎? それとも……」
「へび」
怪訝そうに肉を眺めたはじめにそう告げれば、はじめは噎せ返って肉を喉に詰まらせた。その背をバンバン叩いて肉を吐き出させる。はじめは信じられないと言わんばかりにこちらを見つめてきた。
「へ、へび……?」
「そ。森ん中ででっけーのが死んでんの見っけたから、肉切れとってきた。へびスープだよへびスープ」
「お前、よくそんなものが食えるな……」
「お前だって食ってたじゃねーか。それによ」
アタシ今、お腹空きすぎておかしくなりそうなんだよ。肉を食べても、味がしねえんだ。まるで灰でも食べてるみてぇでさ。
マナは言いながらスープを飲み干した。もう食べ終わっているらしい。
「……そ、そうか……こっちは暫く食欲でないぞ……」
お腹空きすぎて味覚を失うのは果たして狐者異らしいのか狐者異にあるまじきことなのかはわからなかったが、マナの感覚がちょっと他人と違っているというの
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