フレデリックとヤンデリカ
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観客が別の意味でざわついていく。
すると、必死にドラゴンの着ぐるみを持ち上げる黒子のハッピーがプルプル震え始めた。
「着ぐるみの分・・・重いなァ・・・」
と、その時。
「あ」
「が!?」
ハッピーがドラゴンの着ぐるみを落としてしまった。
その下にいたルーシィ、着ぐるみの中にいるナツは目を見開く。
それを見ていた裏方のティアは溜息をつくと、何やら準備を始めた。
「!」
ドラゴンが落ち、床が一部壊れる。
と、ルーシィのドレスに火がついた。
「きゃあああー!グレイ助けてーーー!氷!氷!」
「おし!アイスメイク」
もう役名ではなく本名で呼んでしまっている。
グレイが造形魔法の構えを取ったその時・・・火が消えた。
突然の事に舞台の上のルーシィ達も戸惑う。
「ドラゴンよ、怒りをお鎮めください・・・」
すると、そこに微量の悲しみに似た感情を含んだ少女の声が響いた。
コツ、コツ、と靴を鳴らし、声の主は姿を現す。
「嗚呼、偉大なるドラゴンよ!あなたをこの様に扱った人間をお許しください!」
そう言って祈るように手を組んで目を閉じるのは・・・
「「「「ティア!?」」」」
あれほどまでに舞台に出るのを嫌がっていたティアだった。
いつもの帽子はなく、淡い水色の尼僧服に身を包み、カーリーロングヘアは下の方でくるくるとしたツインテール、銀色の髪飾りが光を受け煌めく。
ティアはゆっくりと目を開くと、これまたゆっくりと頭を上げた。
「ティア・・・それが私の名なのですか?」
「え?」
「私には記憶がありません。如何して此処にいるのか、如何して私は私なのか・・・己の名すら思い出せないのです」
そう言って伏し目がちに俯く。
いつものあのティアはどこに行ったのか・・・と呆然とするルーシィ達。
「私に出来る事はドラゴンの怒りを鎮め、その猛る赤き炎を消す事だけ・・・嗚呼、何て私は無力なのでしょう!」
そう叫ぶとティアはその場に崩れる様に座りこみ、両手で顔を覆う。
すると、その指の間から水が滲む。
・・・涙を流しているのだ。
「フレデリック様・・・と申されましたね?」
「え?あ、あぁ・・・わ、わわ、我が名は、フ、フレデリック、だ」
突然声を掛けられ、ただでさえ噛み噛みのセリフが更に噛み噛みになる。
ティアは立ち上がり服の皺を直すと、再び祈るように手を組み、懇願するように目を潤ませた。
「1つ、頼みがあるのです。如何かこのドラゴン、命だけは助けて頂けないでしょうか。無力な私ですが、このドラゴンが天に召される事だけは嫌なのです!」
キラキラとした瞳でエルザを見つめるティア。
が、エルザ演じるフレデリックにとって、このドラゴンは敵、なので。
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