最終話 迎えに来たのは彼女の方ですよ?
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鬼兵よりももっと高度な術を使用した存在。
もしかすると、ハク本人の能力を完全にコピーした分身の可能性も存在する。
但し、本人と同じ能力を行使出来る分身の場合、その分身が受けた傷はそのまま使役者の元に返るのが、この手の魔法を使用する上での決まり。
つまり、もし分身の首が跳べば、本体の首も跳ぶ事と成るリスクを負って居る事と成る。
すべての魂を刈り取る鎌が振るわれ、更に三体の剪紙鬼兵が紙くずへと還って行く。
しかし、その時には既に晴明桔梗は完成。ハクのより高度な分身たちは結界の維持へとその役割を移行させている。
そして……。
必滅の霊気を籠めた右腕を巫女服姿の少女は掲げた。その彼女の周囲を蒼白き光球が乱舞する。
そう、それは死に支配された世界を上書きして行く霊力。死とは正反対の位置に支配されたハクの霊気が徐々に凌駕して行くのだ。
荒れ狂う光がこの狂った世界を引き裂き、何もない空間に有り得ない亀裂が走る。
その向こう側からも更に溢れ出して来る光。
それは、龍神の領域にまで押し上げられたハクの能力。急に意識を失った少女の存在……破壊神の少女シノブが口にした単語、龍の巫女が何を意味するのか、今の美月には判らなかった。しかし、彼女が何らかの役割を果たして、ハクの能力が増大した事は想像に難くない。
それに……。
それに、今の彼女を見つめて言える事はただひとつ。
美しいモノには神が宿る。この言葉の持つ力は正しかった。ただそれだけ。
例えその姿が、自ら流した紅き色に染め上げられ、黒き死に神に因って穢されて居たとしても。
その刹那。怖気を誘う声なき声が響いた。千の魔物が雄叫びを上げ、万の邪神が降臨するかのような咆哮を。
びりびりと大気が震え、黒き死に神の周囲に渦巻くように黒き霧が集まる。しかし、今回は晴明桔梗印結界に因り、その範囲外からの精気の吸収を行う事は出来ず。
再び、有りとあらゆる悲鳴が具現化した黒き刃が残った三体の剪紙鬼兵を呑み込み、その存在を包み込む結界へと刃を届かせる。
その黒き刃の一閃に因り、ハクの分身……飛霊の一人が大地に膝を付く。
瞬間、ハクの元に再び上がる血風。
しかし!
「勝利をもたらせ」
強い光の向こう側から聞こえるハクの声。
しかし、彼女の影に重なるように見える懐かしい広い背中。
そして、その彼の直ぐ傍らに見える一人の少女……七人姉妹の末の妹の影。
そうか。あの娘が羽衣を渡した相手は……。
「隔てられぬ光輝!」
紡がれる聖句。居合いの形ではなく、初めから上段に構えられた光輝が振り抜かれた瞬間、大地に巨大な爪痕を残しながら真っ直ぐに進むその先。
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