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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
イビキ
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!」

 しかしそうなると、シノの右隣に座っている誰かさんの名前を呼ぶことにもなってしまうわけで。

「――はいっ!」

 反射的に答えてからはじめは何故呼ばれたのかに疑問を持ったらしく、数秒間の間じっとイビキを見つめた。因みに他生徒は既に執筆を開始しており、はじめのことなぞただの頭が悪い馬鹿男くらいにしか思っていなかったらしい。

「どうした、何か質問でも?」
「……先ほど、私の名前を呼ばれたような……」
「……お前を呼んだ覚えはないが……」

 その一言で教室内の者達ははじめが自分の名前を呼ばれたのだと勘違いしたのだ、ということを知り、一部で笑い声が起こる。自分の失態に気付いたはじめは顔を赤くして、失礼しました、と呟いた。

 +

 とりあえずシノにとってそれは災難だったとしか言いようがない。
 つまるところこの試験とは如何に気付かれずカンニングするかということで、シノは奇壊蟲を応用して第十問以外全ての問題の答えのところを埋め終えており、第十問の出題を待つだけだった。
 しかし左右の二人はそうでもないいらしい。

「報告、はじめ、そっちはどうだ? こっちは限りなくヤバスな状況だ」
「報告、こちらは一問もできていない。ところでヤバス、とはなんだ?」
「ヤバス、とは起爆札を爆発させる際に用いる掛け声だ。覚えておけよ」
「しょ、承知した」 

 はじめに早速おかしな知識を注入したマナに、シノは思わず一ミリくらい首を傾げた。起爆札の掛け声は通常“爆”だということくらいわからないのだろうか、というかそれでもアカデミー次席かこいつ。
 と、目の前に消しゴムが転がってきた。見れば消しゴムのカバーには、「準備はいいか?」とある。それをはじめが受け止め、そして数秒して弾き返されてきた。簡略化された人間が頷いている可愛らしいイラストがある。見れば自分の足元で、一枚の紙を紅丸が弄んでいた。何かの計画を実行する為らしい。というか紅丸を通じて情報交換が出来るなら自分を挟んで消しゴムを弾いたりしないでほしいのだが。

「ぐ、ぐああああああ!」

 突然はじめが椅子の上に立ちあがって首元を掻き毟った。どうしたはじめ! と叫んでマナが机の上に立ち上がる。ふと視線を馳せると、彼等とは同じ班に属しているユヅルが呆気にとられていた。

「はっ! ヤバイ、不治の病の発作がおきたんだな! 試験官、彼に薬を飲ませる許可を!」

 ユヅルの顔が更に「はぁああ?」という顔つきになった。そして思い切りドン引きしている。シノは二人を見比べて、マナの演技の安っぽさには顔を覆いたくなったが、しかしはじめの演技は迫真だった。顔色は蒼ざめ口の端から泡を吹き、喉を狂おしく掻き毟り体はがくがくと痙攣している。思わず本当に不治の病の発作でもあるんでは
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