マザーズ・ロザリオ編
終章・全ては大切な者たちのために
領分
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と題されたそれには、米軍機が北爆によって町を破壊し、民間人を容赦無く殺傷していく兵士などが映されていた。さらに、そこには敵国の人々――田畑を耕す農民、病院で働く女性、無邪気に駆け回る子供達が映されていた。アメリカ国民はその時初めて映像の先に居る敵国の人々が自分達と同じく平和を切望する人々だと知った。
それから一変、戦争反対の声が世論となったのは言うまでもない。
「『知る』という事はそれだけで人の力となる。人間は基本的には自分が善でいたいがために他人に同情的に振る舞うわ。確かに混乱は起こるでしょうね。でも、それもマクロな視点で見れば戦いを止める事になるわ」
「……なるほど。一理ある……が、認められない。残念だが」
「そう……じゃあ、決裂ね。次は螢が答える番よ」
「ああ」
「私は自分の理想の為には手段を選ばない。多くの人が救われる理想の為なら私はこの手で邪魔をする者に死を与えるわ。それを崇高な犠牲だと思ってる。螢は?」
俺はしばらく瞑目した後、立ち上がった。もう座っている必要は無い。
2つの道は…………
「……『死』は2つの極相を持っている。1つは絶対的な確からしさ、それ故の陳腐さ。人間は生きている限り多くの死に出合い、やがて自分もそれに至る」
肉親の死、ペットの死、踏み潰した虫の死、咲き誇っていた花の死。これらは日常に溢れていていたって彼女の言うマクロな視点で見れば陳腐なものだ。
「もう1つは絶対的な不可知性。人間という種族が生まれてから、生きる者は誰1人『死』が何であるかを知らない。これは『生』の延長が『死』である以上、絶対的な制限だ。姉さんの言う崇高な犠牲―――つまり『死』は他者が勝手に与える身勝手な暴力に過ぎない。何人も『死』について語ることが無い以上、『死』を語る資格は無い。だから、姉さん」
死は絶対的に不確実。誰も知ることが出来ない空白の謎。だから俺は何も感じない。殺そうが殺されようがそれで終わりなのだ。
「決裂だ。―――構えろ」
…………繋がらない。
かつて最も近くに居て、一番温もりをくれた、大好きだった姉。
それを俺は…………今、壊そうとしている。
「螢……お願い、やめて」
「……立て、山東桜。もう時間稼ぎも足止めも終わりだ。後は―――自らの覇道を塞ぐ障害を壊すだけだ」
「……して、……どうして分かってくれないの……!!」
轟ッ!!
桜が『動』の気を解放。さらに、目の瞳孔が昼間ではあり得ない程拡がっていく。
人の心に最も深く結び付く『感情』―――彼女が適応したのは『愛情』。
母性は外敵に立ち向かう時に牙を剥く。
「…………」
『静』の気が体に充
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