第九話 〜アスナが地球へ行くお話 前編【暁 Ver】
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任務があった場合に宿泊先や食事を用意するという程度であった。アリサが言った『提案』とは、バニングス家と月村家は過去に、今まで通りの協力内容に加えミッドチルダと地球の通貨を両替する対価として、ミッドチルダの技術提供を提案をしたことがある。謂わば、外貨両替ルートの確立だ。
バニングス家はビジネスとして。そして、月村家はミッドチルダの科学技術に興味を示したわけだが、管理局は、この提案を『メリットが薄い』として拒否した経緯があった。高町なのはを例に上げれば、彼女はかなりの高所得者であるにも拘わらず、結果的に只の一円も実家に送ることが出来ないのだ。尤も、両家共に未だ諦めてはいないらしいが。
「……難しいなぁ」
その呟きは、誰のものであったか。アスナの扱いに頭を悩ませる八神はやてのものか、交渉が事実上暗礁に乗り上げていることを悩む両家のご息女のものか。それは誰にも聞かれることなく空気に溶けていった。
「本当にご迷惑をおかけしました」
あたしとスバルはおばあさん──── 『穂村さえ』と名乗った女性に頭を下げた。明後日の方を向いていたアスナの後頭部を掴み、同じように下げさせる。彼女は、そんなあたしたちのやり取りを微笑ましげに見ていた。何かとても──── 懐かしいものを見るような。優しい目で。
「いいんだよぅ。あんな賑やかな食事は久しぶりだったからねぇ。こっちこそありがとうね」
あたしとスバルは、もう一度深々と頭を下げ礼を言った。すべての発端であるアスナは何も言わずに、さえさんを見つめていた。どうしたのだろうか。
「……おばあ……ばあちゃん」
「うん? どうしたんだい」
「……もし、降ったら、うれしい?」
「そうさねぇ。嬉しいねぇ。だけど年寄りの戯言さ。あすなちゃんは、気にしなくていいんだよ」
「……はい」
あたしとスバルはお互いに顔を見合わせる。何の話をしているのか。
帰りの道すがらアスナは終始無言だった。この娘の無言は今に始まったことではないけど、何かを考えているようにも見える。何かを、悩んでいるようにも。気にはなったが、アスナが話してくれるまで待つことにしよう。
──── そんなわけあるか。
あたしはアスナの後頭部を思いっきり引っ叩いた。アスナは、のろのろと右手を後頭部へ持って行くと、あたしに叩かれた箇所を擦りながら、睨む。
「あんたが何を考えて、何を悩んでるのか知らないけど。あたしは、あたし達はそんなに頼りにならない? 話しなさい。言っておくけど、『親友なんだから何でも話してよ』なんて理由じゃないわよ。そういう安っぽいドラマみたいな台詞は嫌いよ。……あたしはね? あんたに頼りにならな
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